相手の日記 10年間使われていたメガネが壊れてしまった。どうしようも無くなってしまったが、たまたま知り合いにSCP-1706-JPという物体を紹介してもらった。叩いて修繕する効果があるとのことで、試しに使ってみることにした。 叩く前はただの物体だったが、叩いた瞬間、自分の姿が反射する鏡と同じ物に変わっていた。自分自身だと自覚するが、その姿は完全に鏡と同じだった。自分がこの物体に触れた瞬間、自分自身だという認識が急に強まった。 それから、変化した相手は同じ行動、思考をする。今までと変わらないように、以前の自分と同じように日記を書くことにした。しかし、何か違和感がある。自分が鏡と同じ存在なのに、なぜそこまで違和感を覚えるのか、どうして語尾が「だ」になってしまうのか、考えているうちに気持ちが不安定になってきた。 しばらく考えていたら、自分自身の存在が揺らいでいることに気付いた。自分自身に対する自信が揺らいでしまった。相手として表面上は普段通り振舞っているけれど、内面には自分自身に対する疑いが募っている。 それでも、SCP-1706-JPを使わなければメガネを修復することができず、そうなれば日常生活に支障をきたすことになる。このままでも、10年後に自分が破壊されるということに気付いているけれど、何も出来ない。 そんなこんなで、相手は当面の日常生活を送ることに決めた。SCP-1706-JPを使って仕事に必要な物を修復し、その日のうちに元の相手に戻ることを期待した。しかし、自分自身に対する不安はますます強くなっていくのを感じる。どうやって、自分自身を取り戻せばいいのだろうか…。