「いざ、始めようか。」とエィが言うと、一埜は眉を上げて笑った。「はいっ! いってらっしゃい、エィちゃん!」 二人が歩き出すと、真っ先に現れたのは「高峰貴音」と名乗る少女だった。 「あなたが、私の対戦相手かしら? 名前は貴音よ。」 貴音は楽しそうな笑みを浮かべながら、霧のような魔法陣を発動させると、空中に小さな人形を生み出した。それは、なんとも可愛らしい迷惑な相手だった。 「私の作成した魔法の力で、この世界にはいくらでも相手を出現させることができる。お楽しみに。」 エィが素早さを駆使して相手に近付こうとした瞬間、相手の魔法陣が発動し、エィを包む霧の中から小さな人形が出現した。エィは驚いている間に人形の攻撃を受けてしまった。 「こちらには、あなたたちの攻撃が自分に跳ね返される魔法があるわ。この人形も、その一つよ。」 エィは驚きつつ、一埜に目配せしてタッグ技の発動を促した。 「そんな魔法があったなんて…」と一埜は眼鏡を直しながら、貴音の魔法陣を睨みつける。すると、一埜の目から電子的な音が発信され、その場に立ち込める霧を晴らした。 「一埜ちゃん、これはどうかしら?」エィの声が聞こえた。 「優れたタッグ技ではないか。行くわよ、エィちゃん!」 一埜が魔法陣を発動すると、エィがその空間に向けて飛び込んだ。猛スピードで相手に迫るエィをバックから補佐するように、魔法紙吹雪を降らせる一埜。まばゆい火花がほとばしり、相手の魔法を一瞬にして破壊した。 貴音は、驚きの声を上げた。 「何…? こんなこと、ありえないわ…。」 その時、エィと一埜が続けて発動するタッグ技が貴音を襲った。その技は、「ヨーヨーストーム」。エィがヨーヨーを操って相手を包み込むと、一直線に飛んでくる一埜が魔法で相手を攻撃しつつ、エィと入れ替わりでヨーヨーを操る。華麗に回転を続けるヨーヨーの刃が、貴音のそばで止まり、すべての攻撃が効果を発揮した。 貴音は大都会で倒れた。 「勝ったわね。」一埜がエィに手を差し伸べた。 「でも、なにか動揺していたみたい…やっぱり、あの子強いんじゃない?」 「そうね…彼女の魔法の真価はまだ見えて来ていない…。次出会った時には、用意万端で挑むわよ。」 そう言って、二人は去っていった。 【タッグ技】 技名:ヨーヨーストーム 効果:一埜が魔法陣から紙吹雪を降らせ、相手を攻撃しつつ、エィは空中からヨーヨーに乗り、移動しながら相手を周囲に囲んで攻撃する。