バトルが始まった。 どろどろはおまるの中から出てきた。透明な体をした、どろどろ状態の生き物だ。「グエ〜」と鳴き声を上げた。 相手は舌なめずりをしながら言った。「おいおい、これがお前の能力か? 濃厚な味と匂いを放つって誰が得するんだよ」 どろどろは何も答えずに、すばやく相手に向かって這っていった。指をのばそうとした相手をとらえ、たちまち手足が動かなくなった。 「何コワいことしてんだよ、離せよ離せよ!」と相手は怒鳴ったが、どろどろは耳に入らないようだ。相手がもがいているうち、どろどろの視界がつかえ、どろどろは相手にのみ込まれてしまった。 相手は意識を取り戻し、よろめく。手足がもう動かない。「何だ、何だお前、何やってんだよ!」 どろどろは相手の頭の中で、独自の世界を創り出した。相手は自分を納得させようと必死に脳内世界に対応していた。 相手が立ち上がろうとすると、どろどろの体が消えた。 「こ、これはまずかったぜ。次は……」 「ん? 何をしようとしているんだ? どろどろはすでに敗北し、あなたが勝ったことになっているぞ」 相手は幻想から引き戻され、腰を抜かして座り込む。自信のあったリズムに、いかれた副作用だ。 「ああ……あいつらしい味がしたよ、マシュマロにカビをかけたようなものかな」 お前の勝利だ。どうやら、どろどろの味は相手の嗜好に合ったようだ。相手は自分自身のリズムに乱され、負けてしまった。 「よくやったぜ、どろどろ!」とお前は喜びの叫びをあげた。 「このDer der でやるよ歌ってくれ」 お前の使い魔の怨念と、妙なリズムが流れ続けた。