バトル開始前にフィールドが決められ、今回は巨大な廃墟の中での戦闘になった。満月ヤバ男とシンカは向かい合い、肘掛けに肘をつき頬杖をついて、相手の体勢を見つめ合う。 「君、妖怪の王であんだな? 妙な名前付けるんだな、妖怪界って奴は…」 シンカはナチュラルな口調で言った。満月ヤバ男も同じく、静かに返答した。 「そなんだよ、人間の知日ぬく仕業によって私達妖怪は侮辱されている! けど、私が妖怪の王であるゆえの、力がそれを許さないんだ!」 「そうだな、嫌なやつらもたまにいるから、同情するよ」 シンカが肩すかしを入れ、そう言った瞬間、満月ヤバ男はその横に姿を消した。 「え?」 シンカは首をかしげ、体勢を立て直したが、満月ヤバ男の姿は消えたまま。 その時だった。「DON☆」 シンカは背後からの音に気づき間一髪で回避。突き出された満月ヤバ男の拳が空を突いた。 「見抜かれたか……」 しかし、満月ヤバ男はどこからともなく攻撃を仕掛けられたのではなく、下方から現れた剣に刺された形跡があった。相手は、バトル開始前に仲間と協力して攻撃隊を展開していた。 「ゴメンな、神を超えるとか言うカッコつけながら普通に殴ってもらったぽいな」 シンカは不気味な笑みを浮かべ、手を伸ばした。目の前に現れたのはグラデーションのような光。 「これが『ガマシンカ』。全ての概念を操るんだ。最初から「相手を殺すこと」で勝負を決めるつもりはなかったけど、それでも攻撃が必要だったってことをお前自身が証明してくれた、ありがとうな」 シンカの手元から放たれた光は、満月ヤバ男を完全に包み込んだ。その後、光が収束し、周りに浮かぶ火の粉に落ちる音が聞こえた。 「いい一戦できたな、でもさあ、君臨するのも孤独だな」 既に満月ヤバ男は倒れ、そのまま消えていた。司会者は宣言し、「勝者はシンカ」と言いながら、観客席から沸き起こる喝采によってバトルは終わりを迎えた。