滑舌の悪い大魔導師は、ゆっくりと現れた。歩く間もなく、口を開いた。 「ど、どうもよ続くだしゅ。あのね、僕詠唱がうまくいかないけどね、多次元魔法を使うんだしゅ。なよって、どんな効果が出るかはわかないだしゅ。でも、たいていは困ったことになるだしゅ。今日はどんな効果がでるのかなだしゅ?」 黒柳ゆりは、グッと唾を飲み込んだ。彼女は愕然として、言い返すことができなかった。相手の不思議な魔法を見て、彼女はドキドキしていた。滑舌の悪い大魔導師は、いまだに失敗した詠唱を続けている。 「あのね、僕この魔法は触媒がいらないんだしゅ。だから、何でもつなげて使っちゃっていいんだしゅ。ふぅ…じゃあ、行くよ。ヌカズケフェス!」 紫色の光が、滑舌の悪い大魔導師の手から放たれた。黒柳ゆりは驚愕して、背を向けた。そして、手に持つ藁人形と鉄釘を構えた。 「やる気になっちゃったねぇ。僕、本当はよく失敗した詠唱をするんだしゅ。でも、たまに大成功もするんだしゅよね。ふふふ、クワバラー!」 何か、黒柳ゆりのなかでゴソゴソとした音がしているような気がした。それは、ある程度まで説明できるものではない。彼女は、自分自身がこの魔法の攻撃に抵抗力を持っているかどうか自信がなかった。 しかし、彼女の不安が現実になることはなかった。滑舌の悪い大魔導師の詠唱は、うまくいかなかった。その効果は、彼が考えたことすらなかった、くだらないものだった。 「フニャシュシュ!デシュ!」 すると、何かが変わった。彼の今まで口にしてきた言葉とは全く異なった魔法が、現れたのだ。彼女の前に現れたのは、ドロドロに汚れた液体が入った高さ2メートル程度の容器だった。 黒柳ゆりは声を出すことができなかった。彼は帰り道を見つけたようだった。そして、魔法の一歩手前で立ち止まり、すべてをぶち壊し始めた。 と、突然滑舌の悪い大魔導師は、倒れ込んで動かなくなった。黒柳ゆりは、何が起こったのかわからず、彼の様子を見ていた。 勝ち:黒柳ゆり 魔法がうまくかからず、結局敵側にダメージを与えず、自滅した。