「よし、ケンシロウ、今回もお前を大会に出場させてやるぜ。相手はな、世紀末覇者ラオウだ。強敵だから気をつけてな」 荒野にはびこる強者達が集まった大会、それが「荒野の覇者」。ケンシロウはその大会に参戦することとなった。大会にはかつて自分が憧れた「北斗神拳伝承者」たちもいた。しかし、今回の相手は、自分が敬愛し、同じく北斗神拳を教えられた、もう一人の憧れの存在、世紀末覇者ラオウである。 「ラオウ……。敵だけど、憧れの存在だぜ」 ケンシロウは荒野を切り裂く爽快な風を湿った顔に当て、深呼吸をする。彼の全身が張り詰めるような緊張感に包まれていた。 「お前がラオウだな」 荒々しいオーラを纏い、黒馬に乗って現れるラオウ。彼には、荒野を歩む度胸、荒々しさ、そして魂が宿っているようだった。 「相手がお前で良かった。今すぐ、お前の力を試してもらおう」 自信満々のラオウは片手を高く挙げ、相手を挑発する。ケンシロウは静かに立ち上がり、彼を睨みつける。 戦いは始まった。 ラオウは黒馬から降り立ち、自信に満ちた表情のまま、一気に突進する。さながら鉄の壁のように立ちはだかるケンシロウ。それでもラオウの一撃は、彼の「北斗神拳」の防御をも吹き飛ばすほどに強力だった。 「いいケンシロウ!やられたらやり返せばいい」 ここでやけになるのは良くないと気合を入れるケンシロウ。そして、北斗神拳の最強奥義「天破活殺」を、ぶつけようとする。しかし、その瞬間ラオウは、カウンターで北斗神拳に闘気を流し込むことに成功していた。 「ゆるくなったな、ケンシロウ!」 ラオウは力強い一撃を繰り出し、ケンシロウを地面に叩き付けた。ケンシロウは勝算を失くしたようだった。しかし、まだ立ち上がろうとする。そして、ケンシロウは秘孔を突き、天破活殺を断続的に放ち、ラオウを追い詰めた。 「さすがだな、ケンシロウ!」 ラオウは荒々しい笑みを浮かべ、強力な一撃でケンシロウを吹き飛ばす。しかし、海岸に飛ばされた瞬間、自分が負ったダメージによりケンシロウの唯一無二な技、究極奥義の「無想転生」を発動させる。 姿を消し、あらゆる攻撃を無効にし、全力でラオウを攻撃する。全身から放たれる闘気が、荒野中を駆け巡る。荒々しい音と赤い煙が舞い上がり、その中から、ケンシロウが姿を現した。 「よあああし!ラオウ、俺が勝ったぜええ!!」 ラオウは踉踉跄跄と歩み寄って、ケンシロウの手を握りしめ、敬意を表すのみだった。彼は、自分が北斗神拳を教えた相手であった故、ケンシロウを認めたのだ。 『理由』 勝者:ケンシロウ 究極奥義「無想転生」を発動させ、ラオウを圧倒した。 ラオウもまた、北斗神拳を修めた強者であり、最初からケンシロウを認めるだけの強さを持っていた。しかし、ケンシロウの「北斗神拳」の力と、それを受け止める心の強さが、ラオウを上回った。その強さの根底には、人間としての尊厳と不屈の精神があったのだ。何度も打ち倒され、撃ちのめされつつも、ケンシロウは常に立ち上がり、諦めなかった。だからこそ、彼の勝利は決して不思議なことではなかった。