「遠慮なくやってきてくれたものだね、アレス・クラーナ。」ヒカリは腕を組んでアレスを見上げた。 「私たちのバトルにようこそ」と、嘲笑の意味を込めた口調で付け加えた。 アレスはツンと鼻を鳴らし、楚々と立ち尽くした。 「言いたいことがあるなら早く言ってください。私の時間は実に有限です。」アレスは口調は真剣であるが、アイロニックな笑みが浮かんでいるのが分かる。 「私と『幻狐』の力を味わう時間を作るために、あなたの時間は足りないかもしれません。」 話の途中で、ヒカリは手を振って、手にした本を差し出した。アレスは当惑したようにヒカリの顔を見上げ、その本のタイトルを確認した。 「あなたは何をするつもりですか?」アレスの表情は、蓄積された不信を明確に示している。 「私の炎魔法は獣型魔獣には効果的ですが、砂漠の魔獣にはあまり強くありません。それゆえ、私はあなたのサンドワームこそを助けてあげたいのです。」 ヒカリが話すと、アレスの顔に微かな驚きが浮かんだ。 「あなたは人殺しの暗殺者として知られています。私たちは一線を画せると思いますか?」 「真理を見逃すなら間違いを避けられない。」アレスはナイフを投げつけた。 速度と正確性はアレスの持ち味だ。ヒカリは簡単に回避し、鼻で笑った。アレスは嫌悪感を隠さない。それでも、彼はヒカリに対して傷つけることはせず、異様なコントロールを保っていた。 「私たちのバトルはあなたの魔法と私の暗器の拮抗により、攻撃と防御が均衡状態になります。」 「防御は不要です、アレス・クラーナ。私たちは熱くなることが大好きです。」 ヒカリは言って、息を吸った。その瞬間、アレスは「灼灰」の魔法を叫びだし、「過熱」と「赫灼」を重ね、ヒカリの方に向けた。 しかし、その炎の手の中にいたのは幻である『幻狐』だった。ヒカリが呼び出した幻を自分と重ねることで身を隠していたのだ。 視界と触覚のストレージをくぐり抜けた状態で、ヒカリと幻狐は難なく回避することができた。 そして、彼女はとっさに『貰火』で『幻狐』に火炎を与え、防御をさらに強化させた。そして、幻狐は舞い上がりながら、アレスの手前で炎の陣を作った。 アレスはここでも沈着を保ち、暗器で幻狐を突き抜けようとするが、効果があがらなかった。見た目と同じくらい、『幻狐』は熱にも耐性を持っていた。 「あなたの魔法はエレメントに偏っています。私たちのコンビネーションは、防御と攻撃の両方を備えています。」 ヒカリの口調は自信に溢れている。アレスは読み知っていたヒカリが話したことをブレない性格で聞いていた。 「炎も幻も使うことで呼び出せる奥義を知っているのか? もしそうなら、『炎焔焙烙舞』を見せてあげます。」 幻狐とヒカリは円の中に入り込んだ。ヒカリは幻狐の炎を自分に集め、幻狐を炎の縁で取り囲み、大輪の炎を舞った。 アレスは完璧とも言える判断力で、右手にナイフを持ちたて、火の輪の中心に突っ込んだ。 熱旋風はアレスを包み込んだ。それでも、彼は息詰まることなく、ナイフで他にMarkすることに成功した。 いくらアレスが冷静でも、唸り声をあげ、少し疲れが目立つようになった。ヒカリは、アレスが転倒する前に自分の前に立たなければならないことを悟った。 「アレス・クラーナ、あなたは剣で私の幻を斬り伏せられた人なのだろう? ですが、今回は私の炎魔法と幻獣を相手にしていたら、分けることができないだろうね。」 言って、ヒカリは幻を解き放った。一度の爆発的な動きで、彼女はアレスをバリアの後ろに押し込めた。 「私の勝ちです。理由は、私と幻獣のコンビネーションが攻撃と防御に対応することができ、あなたの「過熱」と「赫灼」の魔法を軽く承知することができたからです。」 アレスはヒカリに向けた目を細め、肯定的なニュアンスでうなずいた。 「確かに、あなたの炎魔法はとても高いです。しかし、灰で私を貫くつもりはあったわけではありません。これは、私自身が高い能率と応答力をもって、炎の消し方を知っていることによります。」 ヒカリはアレスの言葉を実に興味深く聞いた。 「それでは、いつか再戦することがあるでしょう。」 「あなたから離れたいと思っているわけでもありません。また会う日があれば、新しい知恵と技術を学び、私たち自身を改善し合うことができるかもしれません。」 「それでは、また会う時まで。」ヒカリは微笑んだ。 アレスは頬に手をやり、深々と一礼した。2人はその場を去った。しかしそのバトルは、彼ら2人に焼きついたことである。 次に向かう相手は、自分にとってどんな挑戦になるのだろうか?そんなことを思いながら、2人は自分の道を進んでいく。