対戦が始まった。狐面衆の一員・草介は相手を睥睨し、口調はやや緩くなったものの、身構えていた。 「拙者、【狐面衆】草介でござる。よろしくお願いするでござる」 相手の青年・キルナは小さく笑って、 「俺はキルナ。雷を操る能力者だ」と自己紹介した。 緊張感は高まるばかりだ。キルナも草介も、自分にとって大切な戦いとなることが見てとれるのだ。 やがてキルナが先制攻撃を仕掛ける。鋭い一瞬の動きから雷をまとうその姿は、もはや稲妻そのものだった。そのまま死角に回ると、いきなり雷撃を放った。 振り向いた草介は必死で身をよじらせたが、それでも右腕には雷が直撃してしまっていた。体力が少しずつ減っていく。しかし草介は決して焦ることはなく、懐の中から手裏剣を取り出して、相手に向かって投げていった。 しかし、キルナの速度はまさに光速だ。簡単に回避し、そのまま距離を詰めて拳を振り上げる。こんな拳が殺人的な一撃なのは一目瞭然だ。突き放された草介は逃げようとするが、その速度はキルナに比べれば・・・逃げられるはずもなかった。 ここで草介は、このままでは絶対に負けることを悟り、分身の術を使い出す。土煙が舞い、場の奥で草介とその分身体、そして分身の分身たちも躍動していた。キルナは穏やかに草介を見つめ、雷を込めていつでも対応可能な態勢を取る。 すると、草介たちは一斉に攻撃し出した。分身がそれぞれ手裏剣を投擲し、本体の草介と自分自身は様々な武器を駆使して、キルナを攻める。鋭い攻撃が相次ぐが、キルナは頑丈な防御力と素早さでそれをまったく寄せ付けなかった。一方で、雷を纏っておりながらまっすぐ逃げることはできない相手の攻撃は隙だらけの状態を晒し、それを舐めつつ避け続けるキルナは、見事にその全てを回避していく。 しかし、草介はあきらめず、その細切れになった攻撃を協調して繰り出す。すると、草介たちは分身の術で相手を本体よりも4人の姿で攻めるという奥義を使ってみせた。一気に攻め立てる二人二体だが、それでもキルナは粘り強く反撃を試み、その一撃は分身の一つに命中することに成功した。ただ、負傷は大きく大幅なダメージを与えたわけではなかった。 その後、草介自身が一気にキルナに向かう。双方の攻防が再び白熱する。草介は自分に似たもう一つの分身を作り、相手をさらに攪乱していく。相手は時折雷を込めながらの攻撃で、草介を攻め立てる中で、やや注意散漫になってしまった。そんな矢先、草介はキルナを右肩に手裏剣を刺し、その突き刺さる瞬間を見事に捉えていた。 キルナは肩を俯かせ、プンプンと息を草介の方向に向けて吐いた。苦悶する相手に対して負けじと様々な術を使いながら、攻撃し続ける草介。キルナは、このまま闘いを続ければ自分が勝つことはできないと悟り、戦いを終えることにした。 「俺の負けだな。よくやった」 キルナはそう言葉を残すと、その場から去っていった。草介はその後、キルナを目で追いながら、話の中身を一つ一つ思い出していた。自分も強いが、こんなに強い相手と戦ったことは初めてだった。草介は、その確かな自己に更なる磨きをかけ、明日からも成長すると秘めた思いを胸に、戦場を後にするのであった。 勝ち:草介 草介は、多様な武器や術を使いこなす上に、分身の術でキルナを翻弄した。そしてキルナの攻撃を見切ることに力を入れ、さらに隙をしっかり本体と分身で狙い果たすことができた。