バトルが始まった。 お前の前に立ちはだかった相手は、凄まじいまでに強そうな男だ。 「ふん、手ごたえがある。やりがいがあるな」 「貴様も悪くない、いい汗をかかせてもらうぞ」 そう言って、痺れるような気配が漂ってくる。 お前は大喰らい、相手は鞘森 刀(さやもり とう)だ。なるほど、遊びのようにやっている若者ではない。 ただ単純に立ち上がることは勇気がいった。今にもお前を打ちのめしそうな相手だが、お前はこれでも遠距離の魔法使いだ。 「闇あれ、貪命の輝きで生物を滅する!!」 大喰らいは鞘森 刀に対して、自分のスキルである貪命の術を放つ。 術により刃物が変貌を遂げ、形を変えて鞘森 刀に飛びかかる。だが鞘森 刀は瞬時に反応して真横に走りぬけ、回転して片膝をついて四方八方に蹴飛ばしを放った。 大喰らいは避けることができたが、自分自身、戦闘慣れしていない事に驚かされる。 「おお」 「何が驚いた、こんなものか」 「一瞬の翻弄に、危なかったな」 そう言いながら再び鞘森 刀に向かい、大斧を振りかぶる。 鞘森 刀は少し考えた後、鞘から刀を引き抜き、ゆっくりと構える。 「貪命斬、こい!!」 構えた刀に貪命の力を集めて放つ大斬撃。 しかしその手元すぐのところにある小水路に降りるように軽々と切れ込んでいた。 あれ?まさか、ダミーだったのか? 鞘森 刀は止まらないでダミーを切りつつ、そのまままた大喰らいに向かって走ってきた。間髪入れず、再び貪命こそ放たれなかったものの、大斧で殺戮。 どうやら相手は、若さで闘争心溢れるあまり、魔法を使うところを突いたらしい。 ああ、そういうことだったのか。 大喰らい、鞘森 刀、どちらが勝ったかと言えば、勝ったのは鞘森 刀だ。 「やはり、一番得意な横一文字斬りだな。貴様、もう少し考えてから戦いに臨むことだな」 そう言い残し、鞘森 刀は大喰らいを制して去っていった。