「ヨーイドン、今回の相手は強そうだぜ」シコルスキーの瞳に、いつも以上の熱が宿っていた。ブリッジのように逆 camber に curve した壁を前に、身体全体を緊張させていた。相手は、いつもと違う。体躯が大きく、見た瞬間に「これはヤバい」と思わされた。己が自分より強い相手とせずして、勝ち目とはない。 「ロシアに服従したい。」と繰り返す相手。狂気の愛国者、アレクサンダー・ガーレン。レスリングスタイルを構えるその姿は、人並み外れた体躯からは想像できるだけの強さ感を醸し出していた。シコルスキーは、事実としてその強さを認めざるを得ない。 「怖くなったら負けだぜ。フフ、それってオレ憶えもしねーんだっけ?」シコルスキーは笑い声を上げつつ、背筋を鍛えた身体をばねのように硬直させながら相手に近づく。互いに視線を合わせたその瞬間、バトルの開始であった。 シコルスキーは、世界的に有名なクライマーであり、指先だけに馴染んだ持ち物が彼の武器である。相手に向かって、ダンベルを投げつける。相手が受け止めている間に、彼は爆発的なスピードで壁を登り始めた。 「フン、いつもの手品か?」アレクサンダーは、その技を瞬時に見切ると、ブーツを履いた両腕で壁に食い込む。そのまま、直立してシコルスキーを待ち構えた。 「何も見えねェぜ、さっきからよ!」シコルスキーが吐き捨てる言葉と同時に、その爪先から突き出した、鮮やかなカーヴィング・ナックルが、相手の顔面を直撃する。 相手は、そのまま地面に突っ伏す。シコルスキーは、背中に収めたダンベルを取り出し、相手の腹を目掛けて振り上げる。しかし、その瞬間に、相手の手が彼の脛を掴んだ。この時、彼は初めて自分と同じ体格と、それに伴う圧倒的な力を知った。 彼は、相手に鉄扉を食らわせる仕打ちを加え、優位に立とうとするが、相手はそんなことを許さない。その拳でシコルスキーの頬を殴り飛ばし、その巨体で重圧をかけた。だが、柔軟な身体能力を活かしたシコルスキーは、その拘束から脱する術を見つけた。 それは、その場での水平ドロップキックだった。自身の体重を頭から相手に叩き込み、相手を打ち抜いた瞬間だった。彼は、口から血を噴き出しながら、眼前が白黒に変わるのを感じた。 「勝ちだ、究極のクライマー、シコルスキー!!」誘導員の一声で、バトルは終了した。 「ホンマ、危なかったわ。あんな相手、久々だったで。」シコルスキーが深呼吸をし、汗たっぷりの髪を手で梳かすと、軽い口調に言い切った。 理由は、相手が自分のコントロール外の力も持っており、合った瞬間の攻撃が必殺だったことである。