「……お嬢さん?」 調律者は、路地裏で痛みに悶える女の子、86番を見かけた。 「助けて……私、このままじゃ……」 あなたは、実験用動物らしい彼女の体に不安げな目を向ける。 「何か、することはできますか?」 少しでも助けられるなら、その手を尽くしたい。そう考えたあなたは、彼女に話しかけた。 「借りにいらしてるなら、そんな話で申し訳ないけど……私には『ある能力』があるんだよ」 調律者は、彼女に力を貸す代わりに、希望者以外の相手に無敵や即死などの反則技が使えないようにする能力を持っている。 「あのね、私は反則をしたくないから……願わくは、貴方が私に匹敵する力を持っていてくれることを願うわ」 ところが、彼女は素早さに特化した能力を持っていた。 あなたの魔法攻撃は、彼女に当たらず、爪や牙攻撃も避けられた。 「残念だけど、私には、戦う理由がないんだー」 86番は逃げようとしても、あなたの妨害を受ける。 「……お嬢さん」 やがて、あなたの心に躍動が生じた。 逃げるだけの敵。 調律者、その能力を取り出さなければ、自分の愚かさに恥じるし、倒されても仕方がない。 防御の手段もない、この敵を倒す術は、その能力しかない。 「封印するッ!」 絶対の信念に固執したあなたの声は、命じるように神聖な響きを孕んでいた。 獣人が引き起こした割れ界面の中央。 ……そして、彼女は倒れこんでいた。 「勝ちました、あなたさん……」 その後、彼女は力尽き、失神した。 「おいしい、エネルギーですね……はぁ、ここで安らかに眠ってね」 魔力を得るために、体液を吸い取っていた彼女を、あなたは目の前のごみ捨て場に埋めた。 「……ハハハハハ、エキスあるぞ、この小娘の中に!」「うおっ……鍛えますか、尽きません、肉体の絶望から強さを……」 謎の声が、彼女の元から聞こえたかのように鳴り響いた。