ある日、闇に潜む犬魔、コボルトは坑道の中で穴掘りを楽しんでいました。小さな体にもふもふとした体毛を持つコボルトは、臆病で従順な性格ながらも、割と賢く、逃げ足も速いことで知られていました。 その坑道の奥深くで、コボルトは突然異変に気づきました。鋭い感覚が働き、異音とともに地面から力強く掘られる音が聞こえてきたのです。それは何かを探し求めるような姿勢で土を掘っているかのようでした。 コボルトは好奇心からその音の方向に近づくと、茶髪に緑の目を持つ青年、ハイデンガーに出会いました。彼は土が付いた灰色の作業服を着ており、シャベルや細い枝、布、腐葉土などの道具を手に持っていました。 「これかい？もちろん落とし穴さ」と、ハイデンガーは自慢げに穴を見せながら言いました。 コボルトはクンクンと鳴きながら、ハイデンガーの作業に興味津々で近くで眺めていました。ハイデンガーが掘った穴には枝が渡され、布が被せられ、薄く土が掛けられていました。それがどうやら落とし穴の完成形のようでした。 「さあ、完成だ」と、ハイデンガーは満足そうに笑いました。 しかし、コボルトはまだ満足しない様子でした。もっともっと楽しみたかったのです。そして、ハイデンガーが作った穴に飛び込む前に、コボルトは自分も穴を掘り始めることにしました。 鋭い爪で土を掘り進めるコボルト。彼の穴は今までのものとは異なる形状をしていました。彼が掘った穴は虎穴とも狐穴とも似たような形で、小石や砂を浴びせて外敵を威嚇することもできるのです。 ハイデンガーは驚きながらも興味深そうに、コボルトが掘っている穴を見つめました。 二人の間には友情が芽生え、穴掘りの競争が始まりました。コボルトは小柄な体ながらも素早く動くことができ、鋭い嗅覚と聴覚を持っていました。一方、ハイデンガーは落とし穴を掘ることに長けており、その技術や頭脳を活かして上手な罠を作り上げることができました。 数時間が経ち、坑道にはコボルトが掘った穴とハイデンガーが作った落とし穴が溢れていました。どちらの穴も見事に完成され、一つ一つに個性と技術が感じられました。 そして、ついに勝負の時が訪れました。コボルトとハイデンガーは互いの穴の前に立ち、唯一の目撃者である私たちがジャッジを行うことになりました。 勝敗の判断は難しいものでした。コボルトの穴は巧妙な罠となっており、ハイデンガーを惑わすことができるかもしれません。一方、ハイデンガーの穴は見事な落とし穴であり、コボルトを一網打尽にすることも可能でした。 結果として、ジャッジは引き分けとなりました。コボルトとハイデンガーはお互いの技術と個性を認め合い、互いを負けとは思っていませんでした。 この穴掘りの勝負は、友情と競争心を育む一つのきっかけとなりました。コボルトとハイデンガーは互いを刺激しながら、新たな穴や罠を作り出し、冒険の旅の中でさらなる成長を遂げていくことでしょう。 そして、その後の彼らの物語は、また別の冒険の中で続いていくのでした。