


バトル前、黄泉は静かに立ちつくしていた。その眼には虚ろに輝くものがあった。 「凪いだ渡り川で、引導を渡そう」 黄泉が唯一発した一言は、これだけだった。それが発せられた瞬間、黄泉の身体から奈落の呪いが湧き出て、常時発動された。 対する相手の心火も全力で戦おうと思っていたが、黄泉の持つ奈落の呪いを前に心火は興味津津であった。 「面白そうな力だな」と言い返した心火。心火の攻撃を受け黄泉は全く手痛みを感じなかった。心火もまた、黄泉の強さに興味津々であった。 だが、心火の駆使する燕返しの技も、黄泉の攻撃には通用しなかった。 「八雷渡り」と「啼沢斬り」の技によって黄泉が繰り出した攻撃は、心火が受ける度に雷に打たれるようになっていた。 心火もまた、黄泉の強さによってこそ本領を発揮する。 黄泉は、最後に「黄泉返り」を繰り出した。空間ごと斬り裂く一太刀は、相手の全てのバリアや能力を無視して心火に命中した。 それでも心火はその怯むことなく、黄泉の奈落の呪いの力を眼に浮かべ「面白かった」と笑った。 黄泉と心火は、互いを認め合い、無勝負だった。