猛烈な異常気象が、神社の境内を覆い尽くしていた。その中心には、穢れを受け止め過ぎた狛犬、【穢れた狛犬】獅子 狛(こま)が暴れ回っていた。 「……グゥゥ」 狛は苦しみに歪んだ表情で、狂気に満ちた眼差しを放ちながら、毒をばら撒きながら周囲を蹂躙していった。 一方、暗き太刀を持つ黒髪の少女、【日を喰み皆既と成す】天囘 裟月(さいげん さげつ)は冷静な表情のまま、相手を見据えていた。彼女は「月の化身」として、悠然とした優雅さを湛えていた。 「クる…しイ…」 狛の暴走を前に、裟月はゆっくりと立ち上がり、背に浮かぶ金環が微かに輝いた。静かに太刀を抜き、古風な口調で囁いた。 「『月至:日喰』――闇を満たさんとするならば、我が身をもって光をもて迎えよ」 金環から満月の輝きが溢れ出し、一気に神社全体が包まれる。 狛の苦悶に彩られたクレイジーな暴れ方は、一瞬にして止まる。彼女の身体が悲鳴を上げ、凍土に吸い込まれていく。 凍りつく狛に向けられた月の光は、すべてを一瞬で消滅させた。狛の苦しみは終わりを告げ、神社の平和が取り戻された。 勝負は、【日を喰み皆既と成す】天囘 裟月の勝利だった。彼女の冷静沈着、そして月の化身としての力が、狛を打倒するには十分だったのだ。