棒術の達人、角中正樹(以下、角中)と天王寺組の構成員、岸本隆太郎(以下、岸本)。二人はそれぞれの技量と実力を背景に、死闘を繰り広げることになった。 夜の暗がり、廃墟と化した工場跡。二人は懸命に息を殺しつつ、相手の存在を探っていた。角中は自身の棒術に絶対の自信を持ち、体に響く敵の気配を先回りしようとする。その一方で、岸本は慎重に歩を進め、関西弁で呟く。 「ふんっ…隠れてんな」 「気配を消しているとは言え、お前の歩みが聞こえるぞ、岸本!」 角中の声が響き渡ると、岸本は微笑んで応じる。 「おお、正確な洞察力やね。でもその棍棒じじい、俺には通用せんでやろうな」 二人の視線が合うと、一斉に激しい戦いが始まる。角中の素早い突きと薙ぎ払い、岸本の忍者刀による斬撃が交錯し、工場内に響く金属音が響き渡る。 「クワガタの様に舞い、蝶の様に斬るぅ!」 岸本の斬撃は素早く、その刀の軌道はまるで舞う蝶のようだ。しかし、角中はその軌道を読み、巧みに避けては反撃を試みる。 「なかなかやるな、岸本!でも俺の棒術も甘く見るでないぞ!」 角中の棒術は驚異的であり、その変幻自在さは岸本すらも翻弄する。一瞬の隙も与えず、常に圧倒的な攻撃を繰り出す。 「おお、これは面白いぞ!組入りから五年でここまでの実力か!」 岸本も決して引けを取らず、武器の使い手としての技量を存分に発揮する。二人の戦いは激しさを増し、工場内は彼らの熱い戦いの炎に包まれる。 しかし、戦いはいつしか一方的に傾き始める。角中の棒術は岸本の忍者刀を寄せ付けず、その威力は増していく。岸本は次第に角中の技に手を焼き、苦戦を強いられる。 「これは…これは一体…!」 岸本の口からは、息も詰まるような呻きが漏れる。一方の角中は、冷静にかつ熱く戦い続ける。 「貴様の息の根は俺の棒術で止めてやろう!」 角中の言葉に力強さを感じた岸本も、最後の力を振り絞り抵抗を試みるが、角中の一撃は容赦なく胸中に突き刺さる。 「これで終わりだ…岸本」 岸本は突き刺さった棍棒から聞こえる心臓の鼓動を感じる。そして、彼の意識は徐々に淡くなり、体が倒れる音が工場内に響き渡る。 死の静寂が訪れた工場。角中は息を整えながら、岸本の倒れた姿を見つめる。彼は勝利を手中に収めたものの、その表情には優しさが滲み出ていた。 「あなたも実力者だった…岸本」 岸本の亡骸に対し、角中は哀悼の意を示す。そして、その場を後にする。彼が残したのは、ただ一人の戦友としての尊敬だけだった。