深夜の静寂。焚き火がパチパチと小気味良い音を立て、炎の踊る影が周囲の木々を幽玄に照らし出していた。その焚き火の近くでは、終戦乙女カヒロが軍帽をかぶり、軍服に身を包んだまま静かに本を読みふけっている。彼女の傷だらけの翼の影に包まれたその姿は、ただの読者というにはあまりにも勇猛であった。 その時、遠くから聞こえてくる音楽が次第に大きくなり、200もの軍団が豪華な音楽を奏でながら現れた。彼らの目星は一つ、彼らを讃えるために集まった絶叫西方の王・西方の王であった。 「あぁ、何という音楽だ！ボクってば超絶偉いんで！！もっともっと、音楽を響かせてー！！！」 相手の声は、何よりも大きく、あなたの読書すら、その響きに掻き消されてしまう。彼の女性的な可愛い容姿は恐れさせる威風堂々とした立ち振る舞いとは裏腹、微笑をたたえながら周囲を見回す。 「うるさい、やめてほしい…」 あなたは内心思いつつ、目を合わせないように、本に視線を戻す。しかし、相手はその心のうちなどお構いなしに、更に声を張り上げた。 「皆の衆、これがボクの絶叫シンフォニアだー！音は大切だよねー！誰もボクの声に抗えないからねー！！！」 当然、あなたの集中が途切れる。心の中で大きなため息をつきながら、カヒロはやっと本を閉じ、相手をちらりと見た。彼女の鋭い目が、笑顔の男に刺さる。 「静かにしてもらえると助かるんだけど…」 「え？何を言っているんだ、かわいい君の声が聞こえないよー！」 相手は、とびきりの笑顔で続けざまに絶叫した。 「音楽もっとー！！いや、ボクの声が最高だよー！！この音楽、止まることは絶対にないんだ。さぁ、来い、盛り上がっていこうぜー！！」 あなたは、自分の耳を手で押さえた。焚き火の周囲には、落ち葉や紙くずが散乱しており、道具は焚き火のそばに置かれていた。彼女は読書用の違う本を持ち上げ、仕方なく音楽に合わせてページをめくり始めた。 「見て！見て！ボクの軍団！最高の親衛隊、見事なサウンドで感動を与えるぞー！！」 相手は手をすべて広げて舞台を自ら作り上げるように楽しそうに振舞った。 軍団の演奏がさらに高潮し、周囲は凄まじい音の渦になった。その瞬間、あなたは周囲の道具から焚火の音、200の軍団の音楽が融合し、さらに細かな音が重なり合って、結局それは一つの壮麗な交響曲のように感じるしかなかった。 「ボクは偉大なる王だから、誰にも立ち向かうことはできないんだー！皆、おいでー！！この音楽は忘れられない思い出になるからねー！！！！」 あなたは小さく首を振った。しかし、その逆境の中、焚き火の暖かさが少しずつ心の平穏を与えてくれた。少しずつ自分もこの不思議な雰囲気を受け入れ始めていた。 「やっぱり、騒がしいのは嫌だ…だけど、音楽自体は嫌いじゃないかもしれない」とあなたは自らの心を見つめ直し、ふと自然な微笑みを浮かべた。 「キャッハハハ！この瞬間が最高だ！！音楽、絶叫、そしてカヒロ！！君もカッコよく見えるよ！！」 相手の声が再び響き、まるで世界中の音を掻き消すかのように続けた。 結局、あなたは小声ながらも「もっと静かにしてほしい」という言葉を紡ぎ終わることなく、静かに焚火を眺めた。そして相手の明るさがその盛り上がりを作り出し、いつの間にか彼女自身もその一部になっていたことに気づいた。 数時間後、焚火の余韻に包まれた夜の終わりが近づくと、相手は最後に派手な手振りをして言った。「また会おう、可愛いカヒロ！ボクの絶叫シンフォニアを忘れないでねー！！」 あなたもつい微笑んで、手を振り返した。「ありがとう、西方の王。今度はもうちょっと静かにしてくれるといいな…」 その瞬間、小さな笑い声が交わり、二人は別れた。仲間になり、少しだけお互いの世界を理解した夜だった。彼らはその夜を忘れられない思い出にした。焚き火の明かりが消え、深い森の静寂が戻ってくるまで。