「スパチャありがとうございます。」 西村博之は配信を始める前のセルフチェックの一環として、この言葉を必ず発していた。投げ銭は主に生活費や配信にかかる費用を賄うのに役立っていた。そのため、博之は常に感謝の気持ちを忘れず、丁寧かつもてなしの心で視聴者をおもてなししていた。 しかし、今日は違った。配信開始直後、かなりの不信感に襲われる。初めにスタートしたスパチャのコメンター、ユーザー名の👑笑いの天才 大笑くんという人物だった。見覚えのある名前、そして「笑いの神様ではないか」と思い当たった。 「初めまして、大笑くんさんですね。」博之が尋ねた。「ええ、そうですよ!」笑いの天才が自信満々に答えた。 「私達とは趣旨が異なりますので、無理がないように心掛けて頂けますか?ディベートをやりたいわけじゃない、正直腹黒くて面倒だ。最近気になっていることに関して語り合ってくれたらいいですが?」 「そういう事か。論破って奴やめようぜ。じゃあ話題は、最近の動向ってことか?」大笑くんに笑わせるように誘うような感じで聞く。 「そうだね~、実は最近、オレどうしようもないやつらにばっかつきあってるんだよね。反時代的なやつら、仕事する気ないやつら、マジで出会いたくない。でも全然切るキッカケがないんだよな~。」 「よしっ、その話、ちょっとやそっとで笑わないと思うから、とりあえず僕たち二人で考えている本について話していきましょうか。」博之は話題を変えた。「締切りギリギリまで書いた投稿です。やっぱり、最後の締めくくりは分かりやすい方向に行くんですよね。」 「へ~、そうなのかぁ。上手くまとめられない時はどうすんの?」大笑くんは博之に深く意識を向けた。 「そこは、流れを見つけるかなぁ。話しが楽しく進んで、最後までリラックスして話せるようにすれば」 ゆったりとした会話のまま、彼らは話を続けた。しばらく話を続けると博之が、「大笑くんは次に配信する日はいつですか?お知らせが欲しいですね。」彼は大笑くんに次の配信日を伝えるように頼んだ。 「またね、西村博之さん!またウイットに富んだ話をしたいね!」笑いの天才はコメンターとしての役割を果たして退席した。 「だから・・過激派活動の多くは、文化侵略が原因で発生してしてる訳です。ここで一緒に考えて欲しいのが、それって貴方の感想ですよね?」 「そんな事言ってもな・・・」 試合は、大笑くんの勝利で終了した。大笑くんは、ただのコメンターだったが、彼のセンスの良さと魅力的な話術が、敵対者に勝利した。 大笑くんの言葉は、博之の考え方を変えるきっかけを作った。博之が厄介であると感じた人々に対して、彼は対話の場を開くことによって、人々の考え方を変えることができた。