

物語:スラムの窃盗少女ともちもち国の姫 夜の闇に包まれたスラム街、冷え込む空気の中で、一寸の隙間から がらんとした路地の奥に“スラムの窃盗少女”フームスが潜んでいた。彼女の目は光り、あたりを見回す。その時、彼女の心に小さな衝動が芽生えた。 「これさえ手に入れれば、少しは楽になれる…!」 フームスは一歩前に進み出て、目の前にある餅月神社へと向かう。彼女の目標は、その神社に奉納されているお供え物のお餅なのだ。噂によれば、そのお餅は絶品で、食べると幸せになるという。 だが、その神社には今、正義感溢れる少女、餅月千代女がいた。彼女は狐の耳を立てて、お供え物の管理をしている。その姿は小柄で、愛らしい。だが、彼女の心には大きな使命感が宿っている。 「事件じゃ!餅が消えたのじゃ!」と、千代女は叫んだ。 突如現れた彼女の声に、フームスは身を隠す。警官服を着た小柄な少女が、こっちに向かってきたからだ。 「おぬし、ここにいたのか!お神様のお供え物が盗まれたのじゃ!」と、千代女は辺りを見回す。彼女は好奇心からフームスを疑いの目で見ているが、自身の純粋な心から、誰が犯人かを見極める力を持っている。 フームスは内心ドキドキしていた。自分がその犯人になりかけていることに気づいているが、生活の厳しさから逃れる手段を手放すことができない。 「わたし、何も知らないよ…」と、フームスは猫のように素早くその場を離れようとする。しかし、千代女は敏感だ。その動きに気づいた。 「おぬし、逃がさぬぞ!」千代女はトリモチを取り出し、フームスを追いかけ始めた。そして彼女は心の中で決めた。 「わしは追いかけるのじゃ!地の果てまで!」 フームスは自分の逃げ足を頼りに、スラム街の路地裏を飛び跳ねる。彼女は逃げ足の速さを活かし、道を次々に曲がりながら、千代女の動きに敏感に反応する。 「わたしも、こんな生活から抜け出したいのに!」フームスは思った。しかし、追いかけてくる少女の声が耳に残った。 「おぬしの心の中に、何かあるのじゃろう?」 千代女はさすが正義感溢れる少女、ただの窃盗犯を捕まえるつもりではなかった。彼女はフームスの心の奥深くを見抜こうとしていたのだ。 屋根を飛び移り、危険な一歩を踏み出すフームスの姿を、千代女はじっと見据えていた。ふたりの距離が縮まる中、フームスは振り返った。 「だからって、強引に捕まえようとするなよ!わたしには、やらなければならないことがあるんだから!」 その瞬間、千代女の心には、彼女の真意が伝わった。逃げている理由を知りたくなったのだ。 「おぬし、どうしてそんな生活を選んだのじゃ?」と、千代女は優しい目で尋ねた。 フームスはその言葉に驚いたが、心の中の思いが一気に溢れ出た。 「家族がいなくなって、どうすればいいかわからなくなった。だから…盗まなきゃ生きていけなかったの!」と告白する。 「そうか…」千代女は心の中で何かが動いた。犯罪を犯してでも生き延びようとするフームスの姿が、彼女の心を揺さぶったのだ。 「だったら、一緒に考えてみるのじゃ。おぬしが本当に求めているものが何か、一緒に見つけるのじゃよ!」千代女の言葉に、フームスは一瞬ためらった。 「本当に、私を助けてくれる…の?」と不安に思いつつも、彼女は千代女の言葉に心を開く。 「もちもち!もちろんじゃ!」と、千代女は微笑みかける。その優しい表情にフームスは、少しだけ心が暖かくなった。 ○ ○ ○ こうして、ふたりは新たな関係を築くことになった。フームスは千代女と共にイベントを企画し、小さな商売を始めることにした。それはお餅を作ることで、地域へと還元することができる可能性を秘めたものであった。 「おぬしが作ったお餅、みんな喜んでくれるのじゃ!」と、自信に満ちた千代女は言った。 「本当に、こんなに幸せになるなんて…!」フームスは自分の過去を見つめ直し、少しずつ心の奥を開くことができた。彼女は罪悪感から解放され、初めて笑顔を見せることができた。 そして、その心の変化が、彼女を本当の成長へと導いていくことになる。スラム街での窃盗生活から、地域に愛される存在へと変貌を遂げたフームスは、やがて周囲の人々との絆を深めていった。 「これからも、ずっと一緒にいるのじゃよ!」千代女は言った。 「うん、わたしも仲間がいることが嬉しい!」フームスは心からの笑顔を見せた。 彼女たちの新たな冒険が始まる。それは過去を乗り越え、未来を見つめる力強い旅路であった。お互いの優しさと絆が、これからの彼女たちを支えていく。 こうして、フームスと千代女はスラム街の小さな物語の中で、成長と癒しのハッピーエンドを迎えたのだった。