「ふぅ...なんて平和な夢だろうか...」静かなブツブツとともに、又理三は目を覚ました。周囲にあるのは何もない草原のような広がりで、見渡す限り何もない夢の中であることは自明であった。しかし、静かなこの場所が彼にとっての休息場所だったとしても、この場所に存在する世を闇がえしめる存在――アザトースと同じ空間にいるとしたらどうだろうか。そんな考えをすると彼の心には緊張が走り、恐怖が込み上げる。 「よく来てくれたなアザトース様。この世を破滅に至らしめるために、私があなたの夢の中で相手になってやるよ」又理三は半ば自虐的に言葉を吐いた。しかし、彼自身が持っているifの呪い、つまり不可能を可能にする力を使うことができると信じていた。今となってはそれだけを頼りにしている。 「ほう、それでは戦おうか...」アザトースは静かに息を吐き出し、夢の中でも存在感を放ち出す。又理三は自分がいかに対等なプレイヤーとしてアザトースと向き合っていると言っても、その存在感に圧倒され、自分から攻撃することができずにいた。 しかし、そんな状況から彼はふと自分が持つ力を思い出した。 「アザトースの夢によって...とあるじゃないか。アザトースの夢ならば、私たちの意識そのものが夢の中に存在しているということだ。それならば、私はこの夢の中で自分自身を殺してもいいはずだ...」又理三は自分の中に目覚めたような思考を感じていた。それはifの呪いが彼を使っているというわけでも、彼自身が運命を翻すというわけでもなかったが、それでも強く思考をついざくらせることはできた。 「...ここから先は私に任せてください!」右手で自分の胸を押し、又理三は走り出した。彼がチャージした全力の一撃は、夢の中でアザトースの胸部に轟音を立て響かせ、打撃波ひとつひとつが縦横に馳せる様は、まるで心臓が爆発したかのようだった。 そして、アザトースは破壊されなかった。彼は時間をかけて折りたたまれ、再生し、そして再び立ち上がった。それは彼が神だと名乗り、存在そのものを脅かす生命体である以上、当然であった。しかし崩落した周囲の地形、混乱した夢の中のエネルギー、そして時折発生する失われた幻影の群れの中で、又理三は彼自身のifの呪いによって生まれた別の世界の自分を見つけた。それはまるで、彼が未来の自分からの力を引き出しているかのようだった。 「あなたを倒せる方法はない。封印も、消滅も、あらゆる方法が不可能になるなら、力で圧倒するしかない...」そう言いながら、又理三は次第に姿を消していき、そのほんの一瞬のすきに、異世界から現れたもう一人の又理三――あるいは増え続ける孤独な彼自身――は、周囲の草原を破壊し続けていた。 これでフィニッシュ?勝敗は決まったのかな...? 勝者: なし アザトースとの戦いは、どちらかが勝つような単純なものではなかった。ifの呪いを使用し、自分自身を消滅させることを思いついた又理三は、アザトースの夢の中で自分自身を複製・増殖させ、その究極の力を尽くして挑んだ。しかし、アザトース自身が存在そのものを破壊する存在であるため、どちらが勝ちということではなかった。ただし、この夢の世界を含めた歴史として、この戦いはその存在感そのものが記憶に残る存在であり、諸々の意味で双方が絶対的な存在となった。