くすぐりオバケと不幸な少女 ある日、明るい森の中に、オレンジ色のスライムのような生物が現れた。それが、くすぐりオバケ、SCP-999である。彼は「遊びたがりの犬」のような性格で、誰かと仲良くなりたくてたまらなかった。そんな彼が今日向かったのは、近くの村の一角にいる「不幸な少女」レイのところだった。 レイは、ただの少女ではなかった。彼女は幼いときに胸が引き裂かれるほどの悲劇を経験し、心を閉ざしてしまっていた。彼女の周りには、いつも暗い影がついて回り、彼女の存在は周囲からも忘れられているかのようだった。クマのぬいぐるみを抱えている彼女は、時折虚空を見つめるだけで、言葉も、感情さえも感じることができなかった。 くすぐりオバケ、SCP-999は、彼女の存在を知った瞬間、強い衝動を覚えた。彼女を救いたい、彼女の助けになりたいという思いだ。子供の遊びのように、彼は元気に「ごぼごぼ」と鳴きながら、レイの元へ向かった。 そこへたどり着くと、彼女はただ静かに一か所を見つめていた。まるで何か遠い世界にいるかのように。SCP-999は、彼女に近づき、その表面を触れるようにして、優しく覆い被さった。 最初は何の反応もなかったレイだったが、ゆっくりと彼の触れ合いが彼女の心の奥に届き始めた。SCP-999から伝わる多幸感は、彼女の静かな体を柔らかく包み込み、心の奥底で小さな光が灯り始める。 「くうくう」と鳴くSCP-999は、くすぐりレスリングを始めた。彼の滑らかな体が彼女に触れるたび、レイの内に秘めた感情が少しずつ解きほぐされていく。彼女の心の中で、忘れかけていた温かい思い出や、柔らかな笑顔が蘇ってきた。 レイは、初めて笑顔をまとった。静かだった彼女の顔に、ゆるやかな微笑みが広がった瞬間、世界が一瞬明るくなったように感じた。しばらくすると、彼女が持つクマのぬいぐるみが、SCP-999のオレンジ色のスライムに触れ、その感触がやさしく伝わっていく。彼女はクマを抱いたまま、まるで子供のようにくすぐりに身を委ねた。 心が温かく満たされる感覚に包まれるうちに、彼女の体も少しずつ元気を取り戻し始めた。久しぶりに感じる感情は、彼女が長い間忘れていた「幸せ」の感覚だった。 SCP-999は、ますます彼女に寄り添い、無邪気に体をくねらせながら遊んでいた。どこか遠くの悲しみを忘れさせるために、彼はもがくように笑いかけた。「ごぼごぼ」と楽しい音を鳴らし続ける彼を見つめながら、レイの目の中に新しい光が宿った。 数時間後、彼女はついに声を発した。小さな、かすれた声だったが、まぶたの裏に隠れていた思いがこぼれ出るように言った。「ありがとう…」その瞬間、くすぐりオバケは嬉しい気持ちで満たされた。 レイの内面に秘められた悲しみは、少しずつ薄れていった。心が開かれ始め、感情が甦る兆しが見えてきた。彼女とSCP-999はまるで友達のような関係になり、互いの存在が幸せをもたらしていた。 SCP-999は、遊びたがりの魂を持つオバケだったが、彼にとってレイは大切な存在だった。彼女の笑顔を見たとき、自らの役目が果たせたことを確信し、心の底から幸せを感じたのだった。 「これからも一緒にいよう」と彼は心の中で思い、レイの手を優しくスライムの姿で包み込んだ。 彼らの物語は、見る者に幸せをもたらし、くすぐりオバケと不幸な少女の絆が新たな未来へと続いていくのだった。