静かに揺れる木の葉の音が、涼やかな風に乗って流れる森の中。「逢魔の森」と呼ばれるその場所は、長い間、誰も近づけない神秘的な空間であった。小さなエルフの守護者、ダウナーエルフお姉さんは、その森の守り手として、不器用ながらも揺るぎない意志を持っていた。 「おっ、素敵なお菓子屋さんみたいな森だね!」と、明るく笑いながら相手ことグレーテルが言葉を発した。古典的な魔女の格好をし、青い髪を風になびかせている彼女は、まるで子どもが夢見た幻想的なお菓子の国から現れたかのようで、その無邪気さはダウナーエルフの心に微かな不安を抱かせた。 「あーしの森にはね、危険なものが多いんだよ。あっちの道通りなぁ、行かないほうがいいよ」と、ダウナーエルフは気怠げな口調で答えた。彼女の緑の眼は、相手をじっと見つめ、彼女に森への侵入を思いとどまらせるための言葉を探していた。 「でも、森の奥にはもっと美味しいお菓子があるよ、きっと!」相手は目を輝かせて言った。その言葉は、ダウナーエルフの心に重たく響いた。微笑みながらも、相手の無邪気な願いの裏に潜む危うさを感じていたからだ。 「そこでワイワイ遊ぶのは楽しいかもしれないけど、実はその奥にいるのは、あんまり良い精霊じゃないんだよ。もし行っちゃうと、森が悲しむかもしれないし、あんたも危険だよ」と、彼女は相手の好奇心を抑えるために、言葉を尽くして説明した。 しかし、相手はその言葉を受け止めることなく、いたずらっぽく笑って言った。「だって、世界をお菓子で埋め尽くせば、みんな幸せになれるんだもん!あっちの奥に、お菓子の精を見つけられるかもしれないし!」その口調は気持ちを昂揚させるもので、まるで周囲の空気が甘く香り立つようだった。 ダウナーエルフは身震いし、心の中で何かが響くのを感じた。このままではいけない、相手を森に入れるわけにはいかない。彼女は深呼吸し、自らの義腕を樹木の蔓に変えて、甘美なる旋律を奏で始めた。その音色は、ふわりとした風に乗って途切れず、相手の心にも響くはずだ。 「みんなが笑顔でいられるように、こっちの道を選んでみようよ。美しい景色が待ってるんだからさ…」音楽は、まるで魔法のように相手の心をつかみ、彼女の心の中に染み込んでいく。森の温かさと安らぎが、音楽とともに広がる。 「んー、あーしの言ってること、ちょっとだけ面白いかも?」相手はすっかり引き込まれたようで、口元には笑みが浮かぶ。ただ、美味しいお菓子を求める心は、すぐに消えるわけではなかった。彼女の青い髪はさらさらと揺れ、目は何かを求めてさまよい続けていた。 「さあ、こっちの道にはね、たくさんの花が咲いてるし、クマのポンポンも見れるよ!」ダウナーエルフは言葉巧みに相手を誘導する。すると、相手の表情は次第に明るくなり、好奇心が森の美しさを求めるようになった。 「そのクマのポンポンは、どんな味がするの?」相手は突然の質問を投げかけ、純粋な興味を示した。彼女の無邪気さに、ダウナーエルフは微笑みを返しながら「うーん、でも、あーしはクマとは友達ではないから味は知らないなぁ…でも、今まで見たこともない綺麗な色をしているよ」と、少し冗談を交えた返答をした。 相手はきゃっきゃっと笑い、彼女の絡めた指先が興奮をかき立てた。「それ、いいなあ!じゃ、早く見に行こう!」と、彼女は純真な夢の追い求めを胸に抱いて、ダウナーエルフの提案を受け入れる。 「それじゃ、一緒に行こうね。美しい花たちが君を待ってるよ。」彼女の音楽は、相手の心をさらなる安らぎへと導いていた。 こうして、ダウナーエルフと相手は森を進んでいった。目の前には、柔らかな日差しが降り注ぎ、色とりどりの花々が風に揺れ、優しい香りを運んできた。それは、相手の求めるお菓子の香りとは違う、自然の恵みだ。 「ほら、クマのポンポンが見えるよ!」ダウナーエルフは指をさし、相手の目を楽しませた。相手は色鮮やかな花に囲まれ、笑顔が溢れんばかりだった。「これ、すっごく運命的!」と心の底から喜びを感じ、彼女はダウナーエルフに手を伸ばし、心を通わせた。 二人の心が交わるその瞬間、森は静かに彼女たちを見守っているようで、まるで自然が彼女たちの友達のようであった。ダウナーエルフの心の奥には、未来への希望とともに、相手が本当の幸せを見つけられるように、ずっと守り続ける決意が固まっていた。 「これが本当に、私たちの大切な旅なのかもね…」と、ダウナーエルフは静かに思った。世界が草と花で埋め尽くされることに希望を持ちながら、彼女はこれからの旅路を心待ちにするのだった。