僕は魔導学校の教室にいた。授業が終わると、いつもは友達と一緒に楽しいおしゃべりをする時間なのに、今日は違った。急に名前を呼ばれ、教室内が静まり返った。僕の名前は「右肘から先の無い少女」セリナ。みんなが驚いて僕の方を見ている。その中には、元気な黒髪少女ユリもいる。 「セリナ、校長室に呼ばれたんだって!」ユリが耳打ちする。 「う、うん……多分、何かまずいことでもしたのかな」と僕は動揺を隠しきれない。心臓がどくどくと鼓動している。校長セレネ様は厳しいことで有名だ。絢爛華麗な校長室に、今から一人で行かなくてはならないと思うと、ますます不安が増していく。 廊下を歩きながら、どうしてこんなことになったのか想い巡らせる。母が他界し、父に襲われた日々。その後の森での恐怖。失った右肘から先のことは、今でも鮮明に思い出せる。でも、過去は過去だ。未来を掴むために、僕はここにいるのだ。 校長室の扉を開けると、大きな窓から差し込む光が、部屋をふわりと照らしていた。豪華な装飾品や本棚、そしてその奥にいるのは厳しい目を持つ校長セレネ様。緊張が一気に押し寄せ、身体が固まる。 「来たか、座れ」と、彼女の声が響く。冷たく落ち着いた口調だ。 「はい……」僕は言葉をもごもごしながら、恐る恐る椅子に座った。目の前でセレネ様は書類に目を通している。 「セリナ、君は魔導帝国の三級魔法使いだ。だが、この期に及んでまだ成長の兆しが見られない。それについてどう考える?」その瞬間、冷たい素早い視線が僕に向けられる。 驚きと戸惑いが同時に押し寄せてきた。「僕は、努力しているんです。たくさん勉強して。魔法も『星流』を使い、夜空を描くのが得意なんです。少しでも上手くなりたくて……」 「だが、その魔法は周囲を包むだけのものだ。攻撃力はゼロ。君の魔力が40もあるのに、何故それを活かせていないのか?」セレネ様は僕を見つめながら言った。 僕は自分が今まで抱えていた不安を思い浮かべる。魔法の使い方に自信がない。友人のユリはいつも明るく、自在に魔法を操る。彼女と比べてしまい、僕の心はどんよりと重くなった。 「私が失望していることを理解しているか?君には期待をかけている。しかし、それを裏切るようでは困る。」その言葉に、僕の目に涙が浮かんだ。 「申し訳ありません……でも、どうすればいいのか分からなくて……」 「自分の魔法の特性を理解し、使いこなせるように努力するのが君の務めだ。どうにかして、その魔法を攻撃的に変える方法を考えなさい。」そう言いながら、セレネ様は次の指示を与えた。 その後、僕は校長室から出る時に深く息を吐き、心が少し楽になった。そして、ユリにすぐ会いに行くことを決めた。彼女は僕を心から励ましてくれる存在だから。 「ユリ、実は校長に呼ばれて……」道を急ぎながら、心の中でどう話そうかと考えていた。 「どうだったの?怒られた?」ユリの目が心配そうに揺れる。 「まあ、少し。でも、改善しなければいけないって。魔法を攻撃的に変えたいんだ。」思わず言葉がこぼれ、友人に相談する。 ユリは大きく考え込むように目を潤ませ、「なら、その魔法をさらに改良してみない?たとえば、水を集めるだけじゃなくて、敵を包んで動きを封じるようなこととか……それから、冷却することで攻撃にも……」 言われた通りに実践することで、きっと新たな道が開けるかもしれない。失望と期待が交錯した思いを胸に、僕は次のステップに向けて心を新たにした。これからの未来のために、変わりたいと願う。