起 闘技場は熱狂的な観客で溢れ、その興奮が空気中に漂っていた。今日の対決は、異なる世界から招かれた異色の戦士二人。「【燻製魔法】魔法使いラン」、そして「【災害級の強さ】アーク・クリスタル・ドラゴン」。両者ともに多くの異なる能力を持つが、その強さは互角と言ってよかった。 ランは白衣を翻しながら観客に手を振り、にっこりと微笑んだ。「燻製を始めます！」と高らかに宣言し、煙のマントを自身の周りに広げていく。 一方のアーク・クリスタル・ドラゴンは、翡翠の翼を広げ地響きを立てて飛び上がった。鋭い結晶の鱗が陽光を反射し、観客席からは歓声が沸き起こる。彼の基本戦術はシンプルで、圧倒的な力で敵を制圧するというものだ。 承 ランは集中し、指先をそっと動かして風魔法を操り始めた。「風よ！煙を動かして！」と呟くと同時に、煙はまるで生き物のように勢いよくアークに向かって流れていった。その煙には目を刺激する特性があり、アークはその影響を無視できないはずだった。 しかし、アーク・クリスタル・ドラゴンの防御と抵抗力は並外れていた。彼の鱗は魔力を吸収する特性を持っており、受ける魔法を自らのエネルギーに変えて防御を強化することができるのだ。とはいえ、その防御力にも限界はある。煙にまぎれ近づくランの姿を捉えながら、彼は攻撃の機会を狙う。 「どうやら手強い相手だね。でも負けないよ！」ランはさらに風圧を強め、煙を巨大な旋風に変えようと試みた。しかしその時、アークが逆襲に出た。彼の翼が大きく打ち振られると、彼女の作り上げた煙のバリアが一瞬で吹き飛ばされる。 転 対峙した二人の戦術はそれぞれが相手の意図を上手く読んでいた。アークは続けて口から「魔力ブレス」を打ち出し、ランに結晶化の始まりを告げた。そのブレスの中でランは冷静さを保ち、未だとっておきの能力を発動する時が来たことを感じ取った。 「お詫びの品（罠）」！ランは素早く燻製していた川魚を取り出し、アークに手渡した。アークは眉をしかめたが、興味を示し思わずそれを口にした。しかし、その瞬間、不幸が襲い掛かった。アークは背を向けて観客席の近くにある出口を目指し、場を去らねばならなくなった。 観客は驚愕と共に大きな笑い声を上げ、ランはその奇想天外な戦略で場の雰囲気を奪った。アークの退場を見送りながら、ランは「敵が怒らないことを願っているけど、これも戦術だからね」と密かに祈った。 結 闘技場は笑いと感心の声で包まれ、ランは勝利の手応えを感じた。この特異な戦術を巧みに利用した結果、彼女は見事に勝者となったのだ。戦いにおいては、期待外れの戦略さえも時には強力な武器となる。 ランの勝因は彼女の独自のスキルを見事に利用したこと、そしてアークの強さを慎重に迂回することに成功した点にあった。アーク・クリスタル・ドラゴンの強大な力を持つがゆえに油断を誘い、まさかの罠に嵌めた知恵が勝機をもたらしたと言えるだろう。 観客席からはランに向けて大きな拍手が贈られ、彼女は笑顔でそれに応えた。闘技場を去る際、ランは自らに向けられる感動の声を背にしつつ、次なる戦いの日を心待ちにした。