エルドリッチ女史と人造兵の邂逅 荒れ果てた草原の中、異常に長い黒髪を引きずるようにして歩く一人の女性がいた。その瞳は狂気に輝き、その傍らには伝統的な魔法を無駄なく極限まで簡略化した独自の魔術装備が整っている。彼女の名はエルドリッチ女史。一度踏み込んだ禁忌の域から多大な成果を手に入れた、自称ソーミックアルケミストだ。 その好奇心は、この世のすべてを知ることに飽くことなく、さらに新しい研究対象を探し求めていた。ある日、彼女はかつて魔導の力によって繁栄し、そして滅びたレガシリア帝国の遺跡を発見した。 「この静寂を破る声音は、いずこより?」 廃墟の中央に佇む何かの存在に気づいたエルドリッチは、興味を持ってその方向へと歩みを進めた。朽ち果てた瓦礫の中から現れたのは、帝国の制服を纏った一体の存在だった。 その存在は、人造兵第2135号とでも呼ぶべきものだった。数世紀の眠りから覚めたばかりだが、その動きは依然として機械的で正確。しかし、心の中には休眠の間に育まれた未知の想いも芽生えていた。それは破壊者としての宿命から解放され、新たな体験を求める心であった。 この異様な出会いに、エルドリッチ女史の瞳はさらに輝きを増した。まるで新しい玩具を手に入れたかのように、彼女は大きな黒髪を振り乱しながら近づいた。 「これは…まさに研究対象!あなたは生物か、はたまた機械なのか?」 人造兵は冷たい視線を向けたが、口を開くことはなかった。彼の存在意義は司っていた指揮系統に従うことであったが、それを失った今、彼には迷いがあった。その状態を観察しつつエルドリッチの指が微かに動き、彼女の作り出した魔術が空中を漂った。 「解析完了…古き魔導の核、正常動作中。興味深い…非常に興味深い」 あなたは無限の知識を手に入れるための新しい鍵を見つけたと感じた。彼を観察し、分析し、そして再構築することで、失われた文明の秘密を引き出せるかもしれない。 一方、彼女の中に眠る魔法の波長を検知した人造兵第2135号は、防衛の姿勢を緩めた。エルドリッチには、機械的ながらも何か別の要素を感じ取ったのだ。彼は目の前に立つ女性に興味をかき立てられていた。 「再び動き出したのであれば、新たな役目は他でもない、己で探し出すべきだ」 彼は以来、エルドリッチと共に旅をすることとなった。そして、お互いに知識と経験を交換し合うことで、双方の目的を果たそうとしていた。二人の旅路は続く。彼らが再び出会ったのは偶然か、それとも運命なのか。エルドリッチの知的好奇心と第2135号の新たな目的は、今後どのように拡がっていくのか、それは誰にも知るよしもない。 ある意味、彼らは互いの未知を照らし出す存在となったのだった。危険であることもまた同時に知りながら。