ある静かな夜、闇が深く沈む中、憎悪の呪術師ラシャは一人、自らが築き上げた呪いの世界の中心で、負の感情と惨劇をその身に忍ばせていた。彼女の周りには、彼女を憎む者たちが思い描いた数々の苦しみが空気に漂い、目に見えないが確かな圧力となってのしかかっていた。それでも、彼女はその状況に満足していた。彼女の呪術によって、その苦しみは他者への呪いとして形を成し、彼女の心にわずかな安らぎをもたらしていた。 一方、モノクロ写真の少女―「過去」が、その空間に現れた。ラシャの心の奥底に潜む絶望を感知し、彼女の前にふわりと体を現した。過去は、おせっかいな笑みを浮かべながらも、どこか人間味のない存在感を漂わせていた。 「あなたが持つ苦しみ、少し変えてみませんか?」 過去の言葉はただの提案に見えるが、ラシャの心を一瞬で捉えた。その瞬間、彼女は自らの過去―セクハラやパワハラを受けた痛みを思い出し、それを変えることができるかもしれないという期待を抱いたのだ。しかし、その裏に潜む罠にはまだ気がついていなかった。 「過去を変えれば、あなたの人生は変わる。そして他者の未来には、必ず最悪な結末が待っています。」 彼女にとって、その警告はただの囁きに過ぎなかった。「自分さえ救われれば、他の何かが壊れても気にしない。」そう思ったからだ。ラシャは過去に共の痛みを受けた加害者の記憶の奥深くへと入っていく決意を固めた。 「そう、お願い…」 ラシャの声は饒舌に響いた。しかし、その瞬間、彼女の思考と感情は過去の流れに飲み込まれる。白黒の少女は手を掲げ、彼女の意識を過去へとさかのぼらせる。様々な光景が交錯し、彼女の目の前に現れたのは、彼女を辱めた者たちの姿だった。彼女は強い憎しみに満ちた目で彼らを見つめ、彼らの運命を変える呪文を放った。 現実がゆがみ、かつての苦痛が再び彼女の心を襲う。しかし、今度は彼女が加害者の運命を変えている。ふと、彼女の心に一瞬の安らぎがさしてくる。「彼らはもはや私を傷つけることはできない、私の復讐が果たされたのだ。」 だが、その安らぎはつかの間の夢だった。彼女が加害者たちを苦しめる呪いをかけると同時に、彼女自身の周りで暗雲が立ち込める。過去は、静かな笑みに包まれながら囁く。 「あなたの望みはかなう…代償はすでに支払われているのです。」 次の瞬間、彼女は何もかもを失う運命に直面した。彼女が自由になった瞬間、周囲の人々が次々と彼女に向かって絶望的な運命を受け取る。彼女の悪意に呼応して、彼女の身近な人々や、彼女を愛した者たちが次々に去り、崩れていく。希望が裏切られる瞬間、彼女は絶叫する。 「やめて、だれか助けて!」 彼女の叫びは虚空に消え、彼女だけが虚無に立たされる。周囲には不気味な静けさが生まれ、過去は微笑んだ。 「さあ、あなたの過去が消え去り、未来の絶望を受け入れる時間です。」 ラシャは自ら呪った未来の責任を背負い、どんどん孤独になっていく。周りの人々はただ姿を消し、彼女は闇の中で一人きり。呪いの結果、かつての彼女のすべてを奪い去った者たちの姿も見えない。悲しみを背負い、彼女はただ呟く。 「もう何もない…ただ、苦しみが残るだけ。」 それから数日後、ラシャの未来は無残なものとなった。彼女はかつての仲間や支えとなる人々の記憶のみが、生き残っていた。彼女はその記憶に囚われ、彼らのいない現実を嘆くことしかできなかった。 そして、過去は静かに微笑む。彼女にとって、「他者を救うには、必然的に他者を呪うことになる。」という真実が、さらなる楽しみとなったのだった。彼女の運命は呪いによって揺らぎ続け、彼女は自身の過去を恨み続けることが唯一の生きる道となったのだ。 この結末が、ラシャに対しての過去の冷徹な仕打ちだった。彼女が自ら望んだ運命には、救いなどなかったのだった。全ての選択は取り返しのつかない結末を迎え、終わりなき絶望へと墜ちていった。