「おらっ、これぞ私の魔法よ!地顔の良さとか、トラウマとか、オタクっぽさが合わさった特別な力があるのよ!」未処まゆみ、通称「てきとう魔法少女」は、少し乱れた黒髪を弄りながら、先代魔王ユダとの最後の戦闘に挑んでいた。 彼女は五年も魔法少女をしてきたが、ここまで来る道のりは決して平坦ではなかった。ユダとの激闘によって、彼女の日常の生活から得た感覚が彼女の魔法に反映されていくのだ。枝豆を手に持ち、その存在を思い出しながら念じた。「日常の奇跡、始まるよ!」 すると、空気が揺らいで微細な光が現れ、ユダに向かって突撃する。まるで居酒屋の光で踊っているかのような、温かい明るさが彼に襲いかかる。「ふん、無駄だ!」ユダは冷ややかな眼差しで応じるが、枝豆の力は彼の心に小さな疑念を生じさせる。 彼女の攻撃は徐々に効いていると感じたその瞬間、まさに異空間から魔王が現れた。彼の名はレン。ランの双子の兄であった。今の姿は冷たく、哀しみを抱えた魔王だ。「やはり、君がここにいるとは…」その目に浮かぶ感情が、まゆみの心を掴む。 「お兄ちゃん…!」ランが魔王のもとに現れ、笑顔で呼びかける。彼女の小さな手がユダの影から逃れ、ただ一人の家族としての思いを抱えて魔王に駆け寄った。ランは純粋な笑顔を返し、抱きしめた。 レンも笑顔を見せたが、その裏には悲しみが潜んでいた。「申し訳ない、ラン…」そう言って再び彼女を抱きしめる。レンは彼女の存在を守りたいがゆえに、心に渦巻く憎しみに囚われてしまっていることを認めた。 「ごめんね…君を巻き込むわけにはいかない。」やがて、悲痛な声を漏らすと同時に、魔法が発動し、ランは静かに眠りについた。「君だけは、新しい世界の中で幸せに生きてくれ…」と願いながら。 次に、レンはまゆみに向き直った。「僕の心は既に魔王として迫害され続けた憎しみで満たされてしまった。だからこの世界を自分もろとも全て破壊して再誕させ、せめてランだけは新世界で自分の分まで幸せに生きてもらう。」 まゆみは彼の言葉を聞いて心を痛めた。「そんなのダメだ!何も壊すことなんてないよ、助けられる方法を、私たちで探そう!」 「助けたくても…君を巻き込みたくない。」その言葉が彼の決意を強め合う。「だから君は元の世界に戻す。」 その瞬間、彼女は強烈な力で元の世界に引き戻され、目を開けた。そこはいつもの自宅、半袖のままで半信半疑の状態で彼女は立ち尽くした。だが、内心の動揺は収まらない。「何が起こったの…?」 その余韻に浸っていると、突然不思議な声が耳に入った。「あの世界でやり残したことは無いか?」まゆみはその声に対し考え始める。彼女はまだ、ランやレンと過ごした景色を捨てたままでいた。どうにかして、彼らに再会し、彼らの運命を変える力を持ちたいと願った。心の底から沸き起こる想いが新たな冒険の始まりを告げていた。