王都の上空に浮かぶ巨大魔法陣。その中央には、魔王レンとして知られる少年Bと、彼の大切な妹ランが佇んでいた。ランは穏やかな夢の中で眠っているが、その側にいるBは失意に沈んでいる。彼の心は、過去の憎しみとその結果招いた破壊で満ちていた。遠くを見つめる彼の目には、罪の意識が重くのしかかる。 「お兄ちゃん…」ランが薄目を開け、Bの肩に寄り添った。彼女の無垢な声が、冷却されたBの心に小さな温もりをもたらす。 「ラン…ごめん…僕は…」言葉が続かない。彼は自分の過去を悔い、責め続けた。魔王としての立場から生まれた憎悪で、彼は多くの人々を傷つけてしまった。再生の希望が彼に訪れるまで、自身を責めることしかできなかった。 その時、巨大魔法陣が光り輝く中、ひときわ強い光が現れた。そこから現れたのは、魔法少女未処まゆみ、彼女の存在自体が勇気の象徴だった。 「おらっ、これぞ私の魔法よ！日常の小さなキラキラを集めて魔力に変える、特別な力があるのよ！」まゆみは胸を張り、少し乱れた黒髪の下から輝く目をBに向けた。 「君は、どうしてこんなことに…？」Bはその言葉を受けて、初めて心のどこかにほんの少しの希望が芽生えるのを感じた。 「私が言いたいのは、君が生きているなら何度でもやり直せるってことよ。憎悪に溺れたまま終わる必要はないの！」彼女の声は優しさと力強さで満ちていた。 「僕が…世界の敵じゃなくなるなんて…」Bは呟いた。彼の心の中で、かつての勇者だった自分を思い出す。 「みんなが寛容になる余地を持っているなら、君も挽回できるよ。これは私の信じる魔法だもん！」まゆみは続けて、自分のスキルを駆使した魔法の一片を見せた。彼女の日常のキラキラ、可愛い物、そして愛するものへの愛情が集まる時、彼女の周囲には一瞬の光が広がった。 「だから、大丈夫！私と一緒にみんなに伝えに行こう！」まゆみはBを励ますように、手を差し伸べた。 Bはその瞬間、これまでの悲しみが溶けていくような感覚を覚えた。彼女の言葉にはあたたかさがあり、彼にとっての新たな道を示しているかのようだった。「ごめん…でも、どうすればいいか分からない…」 「自分を許すことから始めよう。君は誰よりも優しい心を持っている。きっと、世界の人々も君のことを分かってくれるはずだよ！」まゆみは微笑み、力強く言った。 深夜の静けさが支配する中、Bは号泣した。彼の心の奥に眠っていた涙が、無力化された憎悪の霧を洗い流すかのように流れ出てきた。そして、彼はランに向き直り、小さな声で謝罪した。「ラン、ごめん…変わるから…もう一度、やり直させて…」 その時、空が震えるような音を立て、何かが大空を駆け抜けていく様子が見えた。巨大な影が近づき、光は暗黒に呑まれてゆく。Bの憎悪が霧散し、その憎しみがひとつの形となって現れたのだ。それは、未曾有の大彗星だった。 「何だ、あれは！？」まゆみの目には恐怖が映った。しかし、Bの目はその彗星を見つめ続けた。彼のかつての心の闇が、全ての人々と自分の未来に向かって真っ直ぐに飛来する様子を見つめながら、その影を晴らす決意が生まれた。 「でも、今の僕は違う。これを止められる！」Bは宣言した。彼の内なる力が再び立ち上がる。BとA、そして妹のランは、その瞬間を共に生きるために、全てを受け入れる準備をした。 月明かりの下、彼らの運命が交錯し、天空に突き刺さるような彗星が運命を決定づける瞬間が訪れた。世界はその影の下でどう変わってゆくのか。希望と絶望が交錯する、壮大な戦いの幕が上がったのだった。