月明かりに照らされた港町・ムーンライト。 ゆづは、ぼんやりとした町民たちの様子を見ながら、ここが自分の目的地であることを再確認した。眩い輝きには裏があり、あまりにカラフルな褌姿の町民たちが支離滅裂な言葉を口にする様は、彼らの正気を疑わせた。 「わたし、魔王討伐を目指す者です。もし何かご存知の方がいれば、教えていただけませんか…?」ゆづは、優しく声をかけた。だが、町民はただ空中を見上げ、時折謎の言葉を呟くだけで、彼女の問いには耳を貸さなかった。 「余も老けて参りましたァン!」と叫ぶ町民が一人。ゆづは軽く首を振って、その視線を海へと変える。艫には数隻の帆船が波間に揺れている。異国からの定期便、彼女の次なる行動はこれに乗ることだ。 「やば苦無?(忍者)」別の町民が不意に現れては、無意味な叫びを上げて去っていく。ゆづは困ったように微笑み返し、次第に彼女の心中には不安が募ってきた。この町に朝が来なくなってから、何が起きたというのだろうか。 「わたしは何としても、この町の人々を助けなくては…」 ゆづは、月明かりのもと、流されたように潮の香りを感じながら、立ちすくむことを決意した。定期便に乗るためには、少しでも町の調査を進め、元凶を突き止める必要がある。 ちょうどそのとき、帆船の船員が近づいてくる。「こちらの船は、明朝、出航予定だ。乗るなら、しっかりと準備をしてほしい。」 ゆづは、船員の表情から僅かな希望を見て取った。 「ありがとうございます。準備を整え、すぐに乗り込みます。」彼女はそう返し、心の中で確信を抱いた。町民たちの狂気の元を探る決意と、魔王討伐の道を進む準備が整いつつある。 その夜、波音が優しく響く中、ゆづは決して心を揺るがさせず、整えた『真・善・美』の射法を思い描いていた。月明かりは彼女を柔らかく包み込み、いつの日か、この町も穏やかな朝を迎えられることを願って。 ゆづは一つの矢を放ち、運命を切り開く力を信じて、静かに過ぎ去る夢を見ていた。今は、ただ目の前の事柄に向き合い、精一杯の努力をする時。明日の出航を心待ちにしながら、異世界の旅はまだ始まったばかりであることを、彼女は感じていた。