砂漠の町は、かつての繁栄の面影を残しつつも、今は荒廃と絶望に満ちた姿をしていた。その中心で、ゆづは静かに矢を構えていた。蒼穹の下、彼女は何とか町を奪還すべく、魔王軍の一員であるドギーと対峙していた。彼女の心の内に宿る強い意志が、月光の如く照り輝いている。 「申し訳ありませんが、これ以上はお引き受けできません。ただ、この町を取り戻すために全力を尽くしますので。」 微笑みを浮かべながら、ゆづはその場に立つドギーに向かって矢を放つ。しかし、ドギーは全く動じることなく、自在に動く神剣アグニ＝エスカを手に、矢を容易に弾き返す。 「ふん、やれるもんならやってみろ。お前のその美しい所作は、ただの見世物だ。俺の剣に勝てるわけがない。」 ドギーの言葉は冷たく響く。彼は大柄な体格を生かし、機敏に動きながら、ゆづの攻撃を疲れ知らずに受け流していく。まさに圧倒的な力の前に、ゆづは徐々に追い詰められていく。 「くっ…！ まだ、まだ終わりません！」 勇気を振り絞り、もう一度矢を放つが、ドギーは一瞬で間合いを詰め、ゆづの前に立ちはだかる。彼は指を一振りするだけで、アグニ＝エスカの神剣が放つ光を浴びる。 「デミ・クラウソラス！」 直後、ぞっとするような切断の感覚がゆづを襲う。彼女はその一撃に身をかがめ、しかし力の差は明らかで、それに追随するようにドギーは強烈な一撃を打ち込む。 「デミ・フラガラッハ！」 その瞬間、まるで雷の如き衝撃がゆづを捉え、彼女は地面に叩きつけられる。響くような痛みが全身を駆け巡り、意識が薄れていく。彼女は望みを失うかのように微笑みを消し、決して屈しない心を貫こうとする。 「剣の足りないお前に、容赦はない。」 ドギーは、勝利を確信し、ゆづに止めを刺そうとその刃を振り下ろす。その瞬間、何かが空気を変えた。神剣アグニ＝エスカが、主人であるドギーの心に邪魔されているかのように、ひときわ熱を帯び、彼の意識を乱す。 「なんだ…？」 ドギーは刃を振り下ろす寸前、剣に蝕まれ苦悶の表情を浮かべた。しばしの隙が生まれた間に、ゆづは地面を這い上がろうとし、体を立て直す。 「これを機に、わたしは…！」 彼女の心の内には、まだ負けを認めない強い意志が残っていた。今、彼女は自らの心の月光を信じ、逆転のチャンスを狙うのであった。いたずらに歌う月のように、美しき反撃の矢を尚も待ち構えるのであった。