月光の美しさを漂わせるゆづは、異世界の旅を続けながら、魔王討伐の依頼を受け、険しい道を行く。ある日のこと、彼女は陽の光を浴びた森の中を歩いていると、不思議な存在に遭遇した。それは、白色と金色の羽毛が混じったハト頭の天使、セラフィック鳩臣蔵だった。 「何があろうと、ポッポー」 相手はゆづに言い放つ。相手の言葉はただの鳩の鳴き声のようで、内容を理解することは難しかった。しかし、ゆづはその奇妙な存在に少しだけよそ行きの気持ちを抱いた。 「ごきげんよう、これは運命の出会いでしょうか。あなたの存在には何か特別な意義が感じられます。」 ゆづの奥ゆかしい敬語に対して、相手は「ポッポー」と応えただけだった。それでも、彼女の心は少しずつ通じ合うような気がした。しかし、不意に不安が彼女を襲った。相手は彼女の油断を待ち構え、突然動き出したのだ。 相手は素早く飛びつき、ゆづの頭にハトの被り物を被せた。そしてその瞬間、ゆづの視界は激しく揺れ動き始めた。 「な、何が起こって…い、いかん!」 ゆづの叫びも虚しく、彼女は魔界のハト集落に転送されてしまった。周囲には、色とりどりのハトが飛び交い、奇天烈な光景が広がっていた。家々は羽毛で覆われ、村人たちはみんなハトの姿をしていた。 「これが・・・魔界なのかしら?」 彼女は思考が混乱し、周囲の異様な風景に困惑する。自分が何をしでかしたのか理解できず、ただその場に立ち尽くすしかなかった。 数時間が経過し、ようやくその奇妙な環境に慣れてきたゆづは、心の奥で決意を固めた。彼女は再び魔王城を探しに出発することにした。そして見上げると、遠方には不気味に聳え立つ魔王城の姿が見えた。 「よろしい、月の光が届くまで、わたしは進みます。」 ゆづは深い息を吸い込み、気持ちを新たにして魔王城へ向かって足を進めた。 その姿はまるで月のように輝いて見え、彼女の内部に秘められた勇気が周囲を照らすようだった。彼女は少しずつ進む中で、これまでの経験を活かし、己を信じる力を胸に秘めていた。 「月乙女の矢が、魔王を討つその日まで、わたしは諦めません。」 そう誓いながら、ゆづは勇敢に歩みを進め、冒険の新章を刻んでいくのだった。