【序章】 深夜、薄暗い部屋の隅で、厨二病末期患者・深夜 充くんは静かに目を閉じていた。彼はその名の通り、厨二病であるがゆえに空想の世界にどっぷり浸かっている。頭の中には不可思議な冒険が広がっており、現実なんてものは二の次だ。 「たとえば…俺の想像力が…無限の魔力となって、異世界の扉を開くのだ…!」 だが、彼の心の中でどんなに壮大な物語が繰り広げられていても、十字架のペンダントが彼を現実に引き戻す。現実逃避の高校生という名のセリフを胸に秘めていた。 【異世界召喚】 その時、ひらりと空気が震えた。突如として現れた異次元の光が充を包み込み、彼は浮遊感とともに意識を失った。 「これが、異世界…!」と目を覚ましたはいいものの、彼がいたのは見知らぬ城の中だった。周囲には、あたふたした家臣たちがいる。 「国王陛下をお呼びしなければ…!」 家臣たちの騒ぎ声が耳に入る。しかし、充は今、別の世界で自分が何者かに召喚されたことすら理解していなかった。 【招待状】 やがて、ボケた国王陛下・耄碌が姿を現す。その白髪から漂うのは、何とも言えないお茶目さだった。 「飯はまだかのう…?」 「国王陛下、現在は遊びの時間ではありません!」家臣リーダーが詰め寄るも、国王はまるで意に介さず、うとうとしている。 「陛下、こちらの少年が勇者として…」家臣が必死に充を指し示したが、国王の視線は空を彷徨っている。 【いざ城へ】 「この子かい?」と、床で寝転びながら指さす国王。充の顔は驚きに満ちた。 「自分は勇者であります! そ、そういうことだ。」充は自信満々に言い返したが、内心は不安で一杯だった。 「よく分からんが、よろしくのう…」 相手は軽く手を振った。 「ええええ!?」充は完全に何が起こっているのか理解できなかった。 【王です】 家臣の一人が肩をすくめて、「実は国王陛下は若かりし頃、無敗の強者だったのですが…今はこんなです。」と、恥ずかしげに打ち明ける。 「じゃあ、ボケた王様が魔王討伐の依頼をくださると…?」 「よく分からないが、任せておこう」と相手は居眠りを続けた。 充は彼が国王の威厳とは程遠いことを理解しつつも、今は自らの使命を果たさなければと決意を固めた。 【こいつ本当に王なの?】 「彼、マジで王様なのか?」と充は思わず口にした。周囲の家臣たちは困惑の表情を見せながら、何とか国王を侮辱しないように微笑んだ。 「陛下の歴史は長いんです。ただ、最近は少し…お歳を召されて…」家臣の弁解を聞きつつ、充は本当に魔王討伐ができるのか不安でいっぱいだった。 【あなたの冒険の始まり】 「王様、魔王討伐に行くには何か助けが必要ですか?」充は勇者としての態度を取りながら言った。 「そうか、あっそういえば…ハンバーグはまだかのう?」相手の問いに充は目を瞠った。家臣たちも呆然とした表情を浮かべ、どう対処するべきか苦悩している。 「とにかく、俺は行くぞ!紫色の覇気を全開にして、魔王を倒してくる!」と、充は胸のペンダントに手をあて、心を決めた。 勇者の冒険は今、始まったのだった。しかし、国王の記憶と共に彼の居眠りが充の行く手を阻むことになるとは、この時はまだ誰も知る由もなかった。