月夜の空の下、薄明かりの中に佇む美しくしなやかな姿があった。「再び異世界に召喚された月乙女」ゆづである。彼女の目は冷静さを保ちながら、前方に立ち塞がる黒い影を見据えていた。そこにいるのは、彼女がこれまでの戦いで噂を聞き知っていた、凶星・大彗星ジェノガイアだ。 「申し訳ありませんが、ここでお止まりくださいませ、ジェノガイア様。」 ゆづの声は優雅でありながら、強い意志を秘めていた。彼女の手は弓を持ち、引き絞り、月光の下で静かに輝いている。「正射必中の矢を放つ時が来たのです。」 「お前がこの世界の唯一の希望だと言いたいのか?」ジェノガイアは、底なしの憎悪のような声で笑った。その笑い声は、彼の存在すらも消し去るような虚無、そして絶望だった。「貴様など、私を止めることなどできはしない。お前もこの世界も、無に還るのだ!」 その瞬間、彼の周囲に激しい暗黒が渦巻き、彼自身がこの世界の終わりそのものであることを教えてきた。そして彼の力が広がるにつれ、周囲の景色は徐々に歪み、ゆづの心も揺れ動いた。 「わたしは、たとえ一人でも決して諦めません。」 迷いのない声で告げると、ゆづは弓をしっかりと引き絞った。クレーターのように凹んだ瞳が、彼女の心の中の決意を示した。彼女の心には「真・善・美」に基づく思いが溢れ、冷静さを保ちながら自身の射形を信じていた。 しかし、周囲の轟音と共に、まるで悪夢のような光景が繰り広げられた。天の星々が次々に消え、暗黒の果てに追いやられていく。このままでは全てが失われる。彼女の仲間は、果敢に戦い続け彼女を支えたが苦闘の日々が続いていた。 「遅れて申し訳ありません。」突然、そこに現れたのは、王国の国王だった。彼の登場は、まるで希望の光が差し込むようだった。「レンに対する私の非礼をお詫び申し上げます。彼が本当に求めていたのは、まだ見ぬ理解なのだと…!」 レンの名を聞いた瞬間、ジェノガイアの表情が一瞬曇った。かつて誤認された兄が、彼の心の中に生き続けているという事実に触れたのだ。 「貴様が…どうしてここに…!」ジェノガイアの声は動揺し、憎悪と混乱が入り交じる。「私は、もう終わりだと言っているのだ!」 その一瞬を逃すことなく、ゆづは弓を構えなおした。「大和撫子の意志、月の光を秘めた矢を、今貴方に放ちます!」 彼女の放った矢は、奔流のように空を裂き、光を映し出す。だが、心の奥に潜む憎悪がその矢を迎え撃つ。果たして、この瞬間、運命はどちらに傾くのか…! その先に、決着の瞬間が待っていることを、彼女は感じ取っていた。