烏賊鮫の暗闇の中、リタは身を縮めながら立っていた。彼女の翡翠色の長い髪は、周囲の黒い背景に溶け込んでいたが、ひときわ目を引く白い大きなリボンはその場でまるで異彩を放っているかのようだった。彼女の青緑色の瞳は、透き通るように静かな内面を映し出していた。 「おかしいですね…」リタは静かに呟いた。最近の冒険の中でも、目にしたことのない生物に飲み込まれてしまった。烏賊鮫という存在は、一般的な冒険者の知識の中には無い。リタは自分の周りの状況を観察しようとしたが、そこは真っ暗で何も見えなかった。彼女は心を落ち着け、冷静に考えた。何か手がかりを見つけなければ。 その時、彼女の前に光を放つ存在が現れた。古代文明の甲冑を纏った人物が、怨敵と戦っていた。見るからに強大そうなその存在は、リタの目の前で烏賊鮫の内臓を切り裂いていく。彼は明らかにこの世界の住人であり、魔王軍との戦いを繰り広げているようだった。 「あなた、大丈夫ですか?」リタはその人物に声をかけた。彼は振り返り、その顔に驚きを浮かべた。深い青い目と強い意志を秘めた顔立ちの彼──【Chapter2-3】革命軍人ヤマトットは、自分を守るために戦っているのだと直感した。 「お前もここにいるのか。この烏賊鮫の体内は危険だ、すぐに私の元へ来い。」ヤマトットは冷静さを保ちながら、リタを手招きした。 リタはその言葉に従い、彼の側に寄っていった。彼の周りには、仲間たちも揃っており、彼らは戦うための準備を整えているようだった。 「ここはどんな場所なのですか? 私は、魔王討伐のためにここに召喚されたのですが…」リタは遠慮がちに尋ねた。 「この烏賊鮫は魔王軍が放った生物で、我々はその体内に飲み込まれてしまったのだ。だが、今は共闘する時だ。魔王軍が再度襲ってくるかもしれない。」ヤマトットは冷静に状況を説明しながら、仲間たちに目配せした。その瞬間、彼の中にある熱い意思が、周囲を包み込んだ。 「良いですね、私も戦います!」リタは魔法の力を込めて宣言した。彼女は素早く自分の剣を取り出し、戦う決意を固めた。 その途端だった。烏賊鮫の体が震え、周囲から暗い影が近づいてくるのを感じた。魔王軍の兵士たちが現れ、暗闇の中で刀を振りかざして迫ってくる。 「来たぞ!準備して!」ヤマトットが指示した。 リタは思い出した。彼女の能力──『ミラーシールド』。自分の周囲にバリアを展開させ、敵の攻撃を全て反射することができる。彼女はすぐにそのスキルを発動させた。 「『ミラーシールド』!」リタが叫ぶと、彼女の周りに淡い光を放つバリアが現れた。次の瞬間、魔王軍の攻撃がそのバリアに触れてすべて反射されていく。 「素晴らしい!リタの力を借りるぞ、大いに活用してやろう!」ヤマトットが叫び、彼は前に出て再び剣を振るった。彼の戦う姿はまさに革命軍のリーダーそのもので、仲間たちが彼を信じて次々と前に進んでいく。 物の体内という奇妙な環境での戦闘は続いた。リタは反射する光を利用して魔王軍の兵士を一掃していった。彼女の心は安らぎながらも、この仲間たちとの共闘にワクワクしていた。 「ふう、やったか…?」ヤマトットが周囲を見回すと、残っていた魔王軍の兵士たちは撤退していくのを確認した。彼は自分の剣を下ろし、リタを見つめた。「ありがとう、君のおかげで勝てた。」 「いえ、私は皆さんと一緒に戦っただけですから。」リタは微笑んだ。 その後、戦闘が終わった場に静寂が訪れた。仲間たちも安堵の表情を浮かべ、リタとヤマトットはしばらくじっとそれを感じていた。 「今夜はここで宿を取る。魔王軍との対抗は、一晩の休息の後で挑むつもりだ。君も休んでくれ、リタ。」ヤマトットが言った。 「わかりました。ありがとうございます。」リタは、彼の優しさに感謝しつつ、仲間たちと共に仮眠の準備を始めた。 リタは、明日が新しい出発になることを願って眠りについた。彼女の心には、仲間たちと共に歩む新たな道が開かれているのだと確信を持っていた。