リタは、薄暗い魔界の広間に立っていた。肩までの翡翠色の長い髪が、この新しい世界の異様な雰囲気に流される。彼女は剣道部に所属し、真面目で冷静な性格の持ち主であるため、戦闘に臨む心構えは十分だったが、目の前に立つ魔王に対しては複雑な気持ちだった。 「私は、あなたと戦いたいわけじゃありません…」リタが心の内を声にした。彼女の青緑色の瞳が、目の前に立つ魔王の無表情を見つめる。彼は無感情で、ただじっとこちらを見ているだけだった。 「無感情とは、如何なものだろう」と感じながらも、リタは冷静だった。彼女の心の中にある『ミラーシールド』の力を信じ、剣を握りしめる。先に攻撃を仕掛ける勇気が出ない。万が一、相手を傷つけてしまうかもしれないという思いが、彼女の小さな心を締め付けていた。 その時、彼女の頭の中にかすかなメッセージが浮かぶ。「この戦闘の先には、何かが待っている。きっと何か、意味がある…」彼女は目を閉じて、心を沈める。 「リタ」ユダが彼女に視線を向け、声をかけたが、その声に大した感情は感じられなかった。「戦うのか？」 「私の前に立つからには、戦うしかないのでしょうか？」そう言いつつも、リタの心には戦士としての責任と、仲間を救うための使命感が沸き上がっていた。「私が守りたいものがあるから…」 意を決したリタは剣を振り上げ、魔王に向けて突進した。その瞬間、彼女の足元に瞬間的に魔法のバリアが発生し、彼女の体から薄い光の膜が広がる。『ミラーシールド』の展開だ。相手の攻撃を反射することができる。リタはそれを信じて魔王に接近する。 「行くわよ！」リタの快活な声が響くと、彼女は剣を振り下ろした。しかし、魔王はまったく動じなかった。彼の冷たい視線は変わらず、反応する様子が全く見えない。 その瞬間、リタは彼がただの幻影であり、実際には何もする気がないことに気づいた。彼女の攻撃は彼には届かない。しかし、彼女には一瞬の隙間が見えた。攻撃を続けることが無意味だと理解した瞬間、心に迷いが生じる。 「どうして戦わないの？」リタは疑問を抱くも、剣を再び構える。「私は戦わなければならないのだと…」 それから数分の静寂が流れる。リタは冷静さを保ちつつ、再度の攻撃を試みる。だが、彼は無反応で、まるで空気と同化するかのような存在感に変わりはない。 彼女が最後の一撃を放つと、魔王は一瞬の後消えてしまった。あまりにもアッサリとした結末に、リタは驚愕する。まるで彼がいるはずの空間からすべての気配が消えたようだった。 瞬間、広間が暗闇に包まれ、リタの周囲に漂う霧が晴れる。目の前には本物の魔王が姿を現した。彼の存在は光を帯び、どこか神秘的で恐ろしいものだった。驚いたリタは自分の剣を握りしめ、身構える。 「この程度なら、僕にも出来るんだよ…」魔王は無表情のまま、どこか挑発するように言うと、彼女の『ミラーシールド』を模してまるで魔法のように再現した。リタの魔力が彼に吸収されたかのように、次の瞬間、彼は光のバリアを自ら作り出した。 「な、何が…？」リタは驚愕で目を見開く。彼女が力を使う前に、彼は全てを手に入れているかのようだった。そして次の瞬間、リタの心臓が締め付けられるような感覚が襲った。彼女の全ての力が、彼の思うままに操られていく。 「これは…私の力が…どうして…」自分の立場の無力さを嫌でも思い知らされた。 その時、空間が震えるような感覚が走り、異空間が広がっていった。何かが起こっている。リタの目の前に、相手に似た少女が現れる。彼女は不思議な微笑みを浮かべ、リタに向かって手を差し出した。 「急いで…行きましょう」少女は優しい声で叫ぶ。その瞬間、リタは手を取られ、まるで風に吹かれるように異空間へと引きずられる。 その後に、ユダが彼女たちの動きを制止しようとする。「待て、魔王様が…！」 しかし、相手が無表情のまま言葉を発する。「止めろ、ユダ。彼女たちを追う意味はない。」その一言で、ユダは一瞬凍りつく。魔王の意志が全てはっきりしているためであった。 「これが君の選択か、リタ。私のためではなく、君のために…」相手が言葉を漏らすと、リタはその意味を理解しつつあった。彼女は異空間に姿を消し、一瞬で安全な場所へと移されていった。 物語は新たな章へと進展し、リタの運命が新たな力によって変わる。彼女はこの結末が意味するものを探るために、再び立ち上がるのだろう。勝利よりも希望を見出しながら、彼女は新しい道の光を信じるのだ。