薄暗い空に覆われた世界。その中に一筋の光が差し込み、リタの青緑色の瞳がそれを捉えた。彼女は大きな白いリボンが揺れる髪をかき上げながら、剣道部で鍛えた剣を手に持ち、前へと進んでいた。彼女の心には不安よりも、これから対峙する運命の魔王に対する冷静さが宿っている。 対峙する相手、大彗星ジェノガイア。彼はかつての勇者の兄、レンの憎悪が結集した姿。強大なその存在は、まさにこの世界そのものであり、リタの心に高鳴る鼓動と一緒に「絶対に止めなければならない」という強い決意が燻る。 「あなたは…ほんとうにレンなのですか?」 リタはかすかな声で問いかける。彼女はその過去を知っていた。双子の勇者が仕立て上げられた悲劇、兄と妹が残した傷跡。それを思うと胸が痛む。 「私はもう…兄でも妹でもない」大彗星ジェノガイアの声は冷たく、虚無を孕んでいた。「私は、この世界の終焉そのものだ。お前が挑むのであれば、全てを飲み込む覚悟を持て。」 リタは剣をしっかりと握り直し、凛とした表情を取り戻した。「あなたを止めるために、わたしはここにいます!たとえ、誰があなたを責めたとしても、わたしはその運命を変えます!」 その瞬間、彼女の背後に『ミラーシールド』の光が閃いた。リタの周りに光のバリアが形成され、彼女の決意の証として静かに輝く。彼女は自らの魔力を高め、剣を振り上げた。剣道を通じて培った技術が、今この時に活かされる。 一方、ジェノガイアの周囲では、彼の放つ怨嗟の音が響き渡り、周囲の空間が歪む。どこか遠くから未来の終焉を告げるかのような声が届く。「またひとつ、無意味な抵抗が始まるのか。楽しむとしよう。」 リタは瞬時に彼の意図を理解した。彼の声、その響きはまるでこの世界のすべてを否定するものであり、それを打ち破るために彼女は存在している。 「負けません!」リタが力強く叫ぶと、剣を振り下ろし、彼に向かって突進した。ジェノガイアの表情が一瞬だけ歪み、彼女が剣を振るう瞬間、虚無の慟哭が彼女の耳元で囁いた。リタの剣が彼の存在に触れた瞬間、異世界からの召喚者としての自らの役割を感じ取る。彼女はこの世界の理に縛られない。 だが、その時、ふいに現れた影がこの戦いに新たな波紋を呼び起こす。国王がその場に現れ、壊れた世界を背負うように立ち尽くしていた。 「レン…今までお前に何をしてしまったか、私は深く詫びる。お前を世界の敵として扱った非礼を、心から謝罪する!」 国王の言葉は静かな波紋となって広がり、ジェノガイアの動きが一瞬、止まった。彼の憎悪の反響が緩むと、その背後にある痛みと苦しみがかすかに見えたような気がする。だが、それと同時に、リタはその瞬間を逃さなかった。 「今こそ、彼を赦してあげてください!」リタは勇気を振り絞り、彼女の剣と心に宿る温もりを同時に向けた。「彼はまだ、心のどこかに希望を持っているはずです!」 心の奥底で揺らぎ始めたレンの意識。国王の言葉、リタの志が、彼を取り巻く憎悪との対峙の中で言葉では表せない葛藤を生んでいた。その戦いが何時の時代も終わらない、そう思わせる瞬間であった。 その時、リタの剣から放たれた光が再び彼女を包み、全ての過去を踏まえた未来が待っていることを示唆する。彼女はその光を信じ、希望の象徴に変えていく――。 だが、決着はまだ、訪れない。〆切ぎりぎりの戦場が、次なる瞬間を求めて静かに動きを見せる。