序章 オーレンの森林を抜け、ティセルは突然の異変に戸惑っていた。見慣れた温かな陽が差し込む草原の風景が、突如として異世界への扉となったのだ。彼女の手に握られる桃の果実は、彼女の落ち着きを保っていた。 「どこに召喚されたのかしら…」ティセルは周囲を見回す。目の前には高くそびえ立つ城があり、まるで物語の中に迷い込んだかのようだった。 異世界召喚 「えっと、ここは…？」 ティセルは小さく呟きながら、城へ向かう道を歩み始める。だが、歩くたびに何かが心の中でひっかかる。 「もしや、私は何かの使命で呼ばれたの？」 安らかな顔立ちではあるが、真面目な性格の彼女は気を引き締めて進む。 「低音の声がする…」 遠くから聞こえるおぼろげな声。どうやら、彼女を迎える者が待っているようだ。 招待状 城の門をくぐると、豪華な装飾に彩られた広間が目に飛び込んできた。家臣たちが待機しており、一人が優雅にティセルに近づく。 「お待ちしておりました、武仙の後継者ティセル様。国王陛下からのご来訪を心よりお待ち申し上げておりました。」 「国王陛下…？」ティセルは変わらず丁寧に応じる。 「はい、こちらにお越しください。」家臣は城の奥へと案内する。 いざ城へ 広間を後にし、ティセルは重厚な扉の前に立つ。中からは、かすかな鼻息が聞こえてくる。彼女は戸を開け、ゆったりとした椅子に座る一人の男性を目にする。 「飯はまだかのう…？」その声はぼんやりとしており、どこか愛らしさがあった。 王です 「国王陛下、こちらが武仙の後継者ティセル様です！」家臣が報告すると、ティセルは自らを紹介する。 「私はティセルです。あなた様の召喚を受けて、ここに参りました。」 「はいはい、ティセル、何か食べ物でもあるかのう…？」 ティセルは驚きを隠せなかった。彼はかつて魔王を倒したという勇者だったが、今はただのボケた老人のようだ。 こいつ本当に王なの？ 「本当にこの人が国王なのかしら…？」ティセルは心で呟く。 「陛下は先代の魔王を倒した偉大なお方なのですよ。」家臣の一人がフォローするが、目の前の現実に疑念が深まる。 「でも、ボケてるんじゃ…」ティセルは冷静に分析しながらも、彼女の心には優しさが溢れていた。 「お昼はもうすぐです、陛下。ティセル様が来たのですから、ぜひ魔王討伐の依頼を…」 その問いかけも空振りに終わり、相手は再び夢の中へ…。 あなたの冒険の始まり そんな中で、ティセルは決意を固める。「陛下のため、私が魔王を討伐します。」 家臣たちは目を輝かせる。「それが出来ましたら、陛下もきっとお目覚めになることでしょう！」 「私はあらゆる災いから守護します。」ティセルは微笑み、戦闘の技を思い浮かべる。「そのために、全力を尽くすわ。」 そうして、ティセルの冒険が始まった。彼女は、ぼけた王のために、そしてこの世界のために、勇気をもって立ち向かうことを決意するのだった。