静かな夜、王都上空に巨大な魔法陣が浮かぶ。深夜の静寂を破るように、そこには一人の戦士が立っていた。名前は深夜充。彼は黒髪を短く整え、制服の胸元には十字架のペンダントを輝かせている。今、彼の前にはかつて勇者として名を馳せた魔王レンがいた。 「何か言いたいことがあるなら、言ってみな。」充は無口な表情を崩さず、冷たい視線を向けた。 「魔王…」レンは、目を伏せてうなだれた。彼は、かつての英雄の名を背負う者でありながら、先代魔王の策略により世界の敵となってしまった悲しい運命の少年だ。「世界の敵として、皆を傷つけてしまった。絶望しかない…」 その言葉に、充は胸のペンダントを握りしめた。「生きているなら、何度でもやり直せる。君は、世界の敵なんかじゃない。」 その瞬間、穏やかな笑顔をもつ少女が現れた。彼女の名はラン。眠りから覚めた妹が、優しくお兄ちゃんと呼ぶ。「お兄ちゃん、強がらなくていいよ。私たちがいるから。」 レンは妹の言葉に涙を流し始めた。「ラン、僕は…」 「お兄ちゃんは、今まで頑張ったんだよ。」彼女は彼の横に寄り添い、その小さな手をしっかりと握った。「だから、謝る必要なんてない。」 「お前は、俺たちを救おうとしているのか？」充は静かに言った。「俺たちは、今までのことを許さないといけない。世界中に君のことを伝えて、君が憎まれるべき存在ではないとみんなに言う。君は魔王じゃない、ただの少年だ。」 「でも、どうやって…？」 「俺は英雄としての功績がある。人々は、俺の言葉に耳を貸すだろう。」充は自信に溢れた目をしていた。「一緒に新しい道を創ろう。」 レンは、充の言葉に希望を見出した。彼の心の中で、焦燥感と憎悪が少しずつ溶けていく。その瞬間、彼は悪でなく、ただの少年であることを再び思い出した。深夜の静けさの中、涙を流しながら彼は心から謝罪した。「ごめんなさい…本当に、みんなを傷つけてしまって…」 ランは彼を抱きしめ、柔らかな声で言った。「大丈夫、お兄ちゃん。私たちには、新しい未来が待っているよ。」 その時、周囲の空気が重く、暗い影が広がり始めた。ランが気づくと、空には巨大な彗星が飛来してきた。その正体は、レンの心の中にあった憎悪の霧散した姿だった。大きな響きとともに、その彗星は大地を目がけて落ちていく。 「これ…僕の…」レンは声を震わせ、恐怖に満ちた目でその光景を見つめた。「これが、僕の憎悪…」 「いや、違う！」充が叫んだ。「それを止める方法は、まだある。お前が素直な心を取り戻せば！」 しかし、彗星はそれらを無視するかのように突き進み、王都に向かって落下していく。大地が震え、空に光が満ち、最後の瞬間、充はランと共にレンを守るために立ち上がった。彼の想像力が紫色の覇気に変わり、光を纏ったその姿は、最後の試練を迎えているかのようだった。 大彗星が接近する中、三人の一瞬の静寂が流れ、全てを飲み込む運命の瞬間が近づいていた。