第1章: 時の狭間 薄暗い異空間、時の狭間。周囲は静寂に包まれており、白と黒の不思議な光が瞬いている。流れる時に身を任せるようなこの場所で、ルビィ・コーラルハートは目の前に立つ謎の少女、ランを見つめていた。ランの物憂げな黒髪と青い瞳は、どこか悲しげな表情を作り出している。 「こんにちは、ルビィです！えへへ、よろしくお願いします！」と、ルビィは明るく挨拶した。しかし、ランは微笑みを返すことなく、視線を落としたままだった。 「あなたが、私を助けてくれたのですね、ランさん。」 「私の兄、レンを助けてほしいの。」ランが低い声で呟いた。「彼を止めて欲しいの、勇者として。」 レン──それは、魔王であり、彼女の兄でもあった。 ルビィの心の内に不安が襲いかかる。彼女の冒険者としての経験はまだ浅いが、自分が知らない何か大きな運命が待ち受けているのを感じていた。 第2章: 先代勇者の過去 時の狭間の薄暗さを背に、ランは静かに語り始めた。彼女の声は、過去への途切れた思いを映し出すようだった。 「私たち、レンと私は異世界から召喚された。私たちの使命は、先代魔王を倒すことだった。」彼女の口元がわずかに震える。「私たちは連携を取り、数々の試練を乗り越え、そして気がつけば勝利を手にしていた。」 ルビィは彼女の話に耳を傾けた。魔王と戦う勇者の話に夢を感じつつも、その裏には想像を絶する苦悩があったことを知り、心が苦しくなった。 「しかし、それは罠だった。先代魔王は狡猾で、私たちの名声を歪める大魔法を使った。私の兄レンは、守るべき人々に魔王だと誤解されて迫害されていった。そして彼は、最終的に絶望に屈してしまった。」 ルビィは胸が締め付けられる思いだった。「彼はなぜそんな道を選んだのですか？」 ランの青い目が悲しげに揺らぐ。「一番大切なものを守るため、彼は選んだこの道を、正義だと信じたのかもしれない。でもそれは、間違った選択に繋がってしまった…。」 第3章: 新たな魔王 ランの言葉が続く。「レンは、魔王になりすました先代魔王の影響を受けてしまった。その結果、彼は人々を脅かす存在として恐れられるようになった。心の奥には、彼を理解してくれる人々への切なる想いがあったのに。」 ルビィは、魔王がどれほど辛い過去を抱えているのか、そしてそれが兄妹の関係に怎样な影を落としているのかを思うと、心が痛んだ。「でも、彼を助けることはできるのですよね？」 「…私にはその力が無い。あなたが力を貸してくれれば、きっと！　あなたを信じている…ルビィ。」 その言葉に、ルビィは強い決意を抱いた。自分にはまだその力が足りないかもしれないが、助けを必要としている者を見捨てることはできない。 第4章: あなたの決意 「私、勇者として、レンさんを止めます！　彼を救うために全力を尽くします！」ルビィは強く言い放った。 ランは驚いたように目を見開いた。「あなたが？」 「えへへ、わたしは勇者になる道を選んだのですから！　負けるわけにはいきません！」自分の心の声に勇気づけられるように、ルビィは続けた。「たとえどんな困難が待ち受けていても、みんなを守るために戦うことが、今のわたしにできる全てです！」 ランは微笑みを浮かべ、彼女の目が少し明るくなる。「ありがとう、ルビィ。あなたがいてくれて本当に嬉しい。共に、レンを救おう。」 その言葉を聞いたルビィは、再び勇気を胸に抱き、時の狭間から一歩踏み出した。そこには、魔王城が待っていた。彼女にとっての新たな戦いが始まろうとしていた。