【序章】 どこか晴れやかな青空の下、一面に広がる緑の草原。少女リルフェルは、低い木の下で静かに横たわるように、楽しげに空を見つめていた。彼女の黒髪が風に揺れ、狼の耳と尻尾をピンと立てて、彼女の天真爛漫な性格を物語っている。 「やっほー!みんな元気かなぁ?」リルフェルは周囲に向かって声をかける。誰も答えないが、彼女は気にしない。遊ぶ相手も時間も、いつでも自分で見つけることができるからだ。 【異世界召喚】 しかし、次の瞬間、突如として空が光り、リルフェルの目の前に不明な力が現れた。「あれ…?何か来る…!」彼女は目を輝かせつつ、風を切る感覚を楽しんだ。 その光が消えると、彼女の目の前には一人の老人が立っていた。白髪に白髭、年老いたその顔には、不思議なほどのぼけた表情が浮かんでいる。「飯はまだかのう…」とつぶやく彼。 リルフェルは、思わず笑ってしまった。「なんだ、あなたもおじいさんね!遊んでくれそう?!」 【招待状】 「遊ぶ?うむ、よかろう。ただ…これ、何かの役に立つかどうかは定かではないが…」老人は小さな丸いものを懐から取り出し、その手をかざした。 「これは、どこかの国のお宝だ。おそらく…召喚状じゃのう。君の世界とは全く別のところへ行く手助けとなる。」とそのおじいさんは言い放つ。 リルフェルは、目を輝かせながらそのお宝を受け取る。「うれしい!新しい冒険が待っていそうだね!」 「それが、本当に冒険であるかどうかは定かではないが…」と呟く老人の言葉を無視し、リルフェルはその宝に触れた。すると、次の瞬間、彼女は吸い込まれ、異世界へと旅立っていった。 【いざ城へ】 光が収束し、リルフェルが目を開いた時、そこは巨大な城の前だった。荘厳な装飾が施されたその城は、彼女が思い描いていた冒険の舞台そのもの。 「やった!とても素敵なところだわ!」嬉しそうに周りを見渡す彼女。 しかし、城の中に足を踏み入れると、目の前には一人の貴族たちが待っていた。彼らは驚愕の表情でリルフェルを見つめていた。「勇者様…!これが国王のおっしゃっていた魔物ですか?」 「魔物じゃなくて、お遊び友達だよ!」リルフェルはニタリと笑った。 【王です】 しばらくすると、白髪白髭の国王が王座に座っていた。「お〜、飯はまだかのう…?」ぽんやりとした目で周囲を見渡す国王。 「あの、そもそも私は魔王討伐に来た勇者ですけど…」とリルフェルは言ったが、国王はその意図すら理解していない様子だった。 「うむ、食事を作ってくれる者はいないのか?あ、そうか、あんたが食べに来たのかい?」と国王は問う。 「まさか、そんなことはないよ!私は遊びに来たの!」リルフェルは少し戸惑いながら回答する。 【こいつ本当に王なの?】 「ほほう、遊びか。じゃあ、遊べるものがないかな…」国王はぼんやりと考え込みながら、「何か、抹茶あんみつはあるかのう?」と呟いた。 大臣たちは顔を見合わせて疲れた様子で、リルフェルにフォローをしようと努めた。「あの、国王陛下。勇者様、ここにいらしたのですから、魔王討伐のお話を…。」 「うむ、勇者が魔王討伐ですか。では、すまんが、箸持ってきてくれんか。」国王は無邪気な笑顔で言う。 「こいつ本当に王なの?」リルフェルは心の中でツッコみながら、順応することにした。 【あなたの冒険の始まり】 結局、リルフェルは国王陛下が言う「魔王」とは別の食事の準備を始めることになった。しかし、その途中、城の中を探検し、彼女のいたずらな本性が呼び覚まされた。 「あっ、隙あり!」リルフェルは後ろから静かに忍び寄り、国王の頭に蜜柑をそっと置いた。「これが貴方の食べ物よ!」 国王は振り返って蜜柑を見つめ、「ふむ、これはまた美味しそうじゃのう!」と喜んで受け取った。 こうして、リルフェルの新たな冒険が始まった。ボケた国王と共に、彼女は魔王討伐とは程遠い、奇妙で楽しい日々を送ることになったのだ。 「冒険って、本当に大事なのは…遊び心なのかもしれないね!」彼女はそう思いながら、周囲の人々を翻弄しつつ、次なるいたずらを企てるのだった。