帆船が波に揺られながら進む中、ティセルは甲板に立ち、周囲を警戒していた。彼女は異世界から召喚され、魔王討伐のためにここまで来た。そして、港町の異変の手がかりを探して、定期便に乗り込んだのだ。しかし、突然目の前に現れた『荒れ狂う烏賊鮫』が彼女の運命を変えることになるとは夢にも思わなかった。 「船長！何か、すごく不気味な気配が近づいてきます！」ティセルは周囲の船員たちに警告した。 「大丈夫だ、ティセル。しかし、何か異常を感じたらすぐに教えてくれ。」船長の声には自信があったが、ティセルの鋭い直感は明らかに危機を察知していた。 その時、海面が揺らぎ、巨大な影が浮かび上がった。烏賊と鮫の特徴を併せ持つその魔物は、恐ろしい口を大きく開けて、船の方向に向かって突進してきた。ティセルは動揺する船員たちの中で、彼女の直感が告げる通り、この巨大な魔物に立ち向かう決意を固めた。 「みんな、下がって！私がこれを引き受ける！」ティセルは決然とした声で叫び、武仙の闘気を纏い始める。 彼女の持つ技術の数々が一瞬で思い出される。霊亀眼で気脈を分析し、麟影歩でその動きに合わせてかわす。そして、応龍閃と鳳仙の力を引き出し、全力で相手に挑むのだ。 烏賊鮫が触腕を振りかざし、ティセルに向かって猛襲する。だが、彼女は冷静にその動きを見極め、スキルを駆使してその巨腕を躱す。そして、間髪入れずに反撃のために【麟影歩】を展開。多重残像を創り出しながら、その虚を衝いて攻撃を仕掛けた。しかし、歴戦の勇鮫の力が相手に宿っており、彼はその動きを完璧に読まれていた。 「そ、そんな……」ティセルは驚愕した。再生する触腕が彼女の攻撃を全て防ぎ、むしろ吐き出された過去の補食物が海面を覆い、苦しむ生き物たちの姿が浮かび上がる。その凄まじい力が彼女の心を不安に陥れていた。 「吐瀉！」突然の声と共に、相手はその口から未消化の生物を吐き出す。船員たちは悲鳴を上げ、恐ろしい光景に目を逸らす。しかし、ティセルは一瞬の隙を突くべく気を集中させ、【応龍閃】で反撃した。まるで滅びの龍が駆け抜けるかの如く、彼女の攻撃は相手の防御を貫いた。しかし、効果は薄く、相手はまるで痛みを感じないかのように彼女を見据え、その無数の触腕を再び振るった。 「凄まじい……それでも、まだ負けない！」ティセルは意を決し、それに立ち向かう準備を整える。しかし、その時、相手はその巨大な口を開き、全てを飲み込もうと迫ってきた。 「全船員、退避！」叫ぶ声も虚しく、相手の口が船を包み込むように降りてきた。ティセルは全ての力を振り絞って戦おうとしたが、瞬時に彼女の視界は真っ暗になり、飲み込まれた。けれども、不運な運命の中で彼女は、相手の体内に何か奇妙な気配を感じるのだった。 「これは……何かの気配が……？」ティセルは薄暗い空間の中で意識を取り戻し、その正体を突き止めるため、強い決意をもって動くことを決心した。どんな危機が待ち受けているかはわからないが、彼女は負けるわけにはいかないのだ。 こうして、ティセルの新たな戦いが相手の体内で始まることとなった。果たして、その先に待ち受ける運命とは——。