王都上空に浮かぶ巨大魔法陣の中心で、あなたは相手を見つめていた。相手は先代の魔王、今は無力化された元勇者であり、深い失意に沈んでいる。その隣には、相手の妹のランが寄り添い、その温かい手を相手の肩に置いている。彼女の穏やかな声が響く。 「お兄ちゃん、大丈夫だよ。私がいるから。」 相手はその言葉に少しずつ心を安らげているようだったが、彼の心には自らが招いた災厄が重くのしかかっていた。彼はあなたを振り返り、涙に濡れた目をして言った。 「僕は…僕はみんなに、そしてこの世界に、どれだけの悲しみを与えてしまったのか…」 あなたは微笑み、その申し訳なさと後悔に満ちた表情を見つめ返す。 「生きているなら、何度でもやり直せるんだ。君は世界の敵なんかじゃない。僕がみんなに説明するから。」 あなたの言葉が小さな光明となり、次第に相手の心の奥に潜む暗闇を照らし始める。相手は目を見開き、震える声で反応した。 「でも、どうやって…どうやって許されるんだ？僕は、魔王として…」 あなたは彼の言葉を遮った。自らの経験から得た勇気を込めて言った。 「僕はこの世界で英雄としての功績がある。だから、みんなも僕の言葉を信じてくれるはずだ。君の真実を語れば、理解してくれる人がきっと現れる。」 その言葉に相手は心を動かされ、涙が溢れ出して止まらなかった。彼は子供のように顔を隠して呻いた。 「ごめんなさい…ごめんなさい…」 ランが彼のそばに寄り添い、優しく頭を撫でる。兄が悲しみに満ちた声を出すたびに、彼女はその肩を支え続けた。 「お兄ちゃん、私たち、一緒に新しい世界を作ろう。もういちど、家族として…」 相手は彼女の言葉に心をつかまれ、自身の過去をただ悔いるだけの自分を悔い始めた。だが、まだ彼の中には隠れた憎悪が渦巻いていた。 その時、空が急に暗くなり、異様な気配が漂い始めた。あなたは不安を感じ、周囲を見渡した。巨大な魔法陣の中心から、何かが浮かび上がる。それは、相手の心に宿っていた憎悪の塊だった。 「なんだ？あれは…」あなたは恐怖し、言葉を続けた。 その瞬間、巨大な彗星が空から迫ってくる。相手はそれを見て、恐れと責任感が交錯する表情を露わにした。 「これが、僕の憎悪…」 すると、彗星は相手の方へ向かって急降下し、破滅をもたらすかのように、その光を放っていた。 「やめて！これ以上、誰も傷つけたくない！」 あなたは叫びつつ、その彗星を指差す。相手も恐れを抱えながらも、憎悪から生まれた災厄を受け入れようとしていた。その時、相手の心の中にあった悔恨が、最後の力を振り絞った。 「ごめんなさい…僕はもう…誰も傷つけない。ラン、君だけは守るから。」 涙を流しながら相手は、宿った憎悪を自ら受け入れる覚悟を決めた。周囲のすべてが彼を見守る中、その災厄は体勢を崩してしまった。 だが、彗星は空を駆け、やがて衝突の直前に、相手の心の中の光がそれを包み込み、虚無へと引き込んでいった。相手は、その目に広がる大破壊を直視しながら、決意の光を放っていた。 「さようなら、そして…ありがとう。」 全てが光の中に消え、彼の想いは果たされるかのように、彗星は世界に新たな夜明けを齎すのだった。