夜の街に厚い霧が立ち込め、静寂を破るように、二人の戦士が対峙していた。一方は緑髪の少女、茅野翡翠。彼女の制服は細かい皺が入り、すでに汗で少し湿っていた。足元では、短いスカートが風に揺れ、彼女の視線は真剣そのものだ。「負けませんよ！」と明るい声を張り上げ、戦う意志を示していた。 対するは『若き求道者』言峰綺礼。黒い神父服に身を包んだ男は、冷徹な視線で彼女を見つめ、自身の戦う運命を受け入れているかのようだった。彼の筋肉質な体は無慈悲さを物語り、隙のない構えからは、ギラリとした闘志が感じられた。 繊細な風が両者の周りを旋回し、静けさの中で動きはじめた。翡翠は薫風操術を操り、周囲の風を紡ぎ、彼女自身を追い風で後押しする。幼さと無邪気さを感じさせる外見とは裏腹に、その動きは素早くしなやかだ。綺礼は、その直感的な動きに対し警戒心を膨らませた。 「来なさい、少女。」温和な声音とは裏腹に、綺礼の声は冷たく響く。だが、翡翠はその挑発に乗らず、一瞬の隙をついて旋風蹴りを放った。その足から次元の壁を超えるかのように生まれた風は、まるで竜巻のように綺礼に向かって襲い掛かる。 翡翠は、まさにこの瞬間に生きていた。軽快な蹴りが放たれ、風が彼女の体を包み込む。綺麗な緑色のスカートが高く舞い上がり、周囲の空気を巻き込んだ。翡翠の蹴りは、勢いよく綺礼の側面へと走り寄り、その脚が彼の体に命中する。しかし、綺礼はそれを受け止め、すぐに連環腿で反撃に出た。 痛みを感じない彼にとっては、どれほどの力で蹴られようとその影響は皆無だ。だが、翡翠の攻撃を受けた瞬間、彼の筋肉は微かに震えた。彼女の技は、防御力の低さを後悔させるほどの威力を秘めていた。 その反撃は痛烈だった。綺礼が放った連環腿は、翡翠の脇腹を捉え、鋭く鋭角的な蹴りは彼女の体に衝撃波を引き起こした。彼女は大きく後退し、地面に崩れそうになる。しかし、意志の強さは彼女を引き上げ、再び立ち上がる。 「負けない…！絶対に負けない！」翡翠は、わずかに捩れた表情を隠して叫び、再度風を操る。彼女の緑髪が舞う中、回し蹴りを繰り出す。身を軽くし、綺麗に回転したその瞬間、彼女は直撃を狙った。 しかし、綺礼は彼女の動きを見切っていた。腕を伸ばし、捌きの要領で彼女の足を受け止める。筋肉がしっかりとした彼の腕の中に翡翠の足は消え、その瞬間、綺礼は裡門頂肘を叩き込んだ。翡翠の顔面に強烈な衝撃が走り、彼女はその場にひざまずく。 柔らかな少女の肌が、冷酷な鉄拳と化した綺礼の肘に打たれ、自らの体がどれほど傷つくかを理解した瞬間、彼女の目は大きく見開かれる。「痛い…」息を飲む翡翠は、痛みが脳裏に焼き付いた。その瞬間、彼女の心臓が僅かに震えた。 「何をしている。戦うというのなら、もっと力を出せ。」綺礼は冷然として言う。痛みの中、翡翠は自分の負傷に耐えつつ、残りの魔力を振り絞る。今の状況、勝つためにはどうにかしないといけない。旋風蹴りが彼に当たらずとも、次の一手を考えなければならなかった。 風に舞う彼女は、思い描いた連打を繰り返す。しなやかな動きで彼に近づくと、直向きに竜巻蹴りを繰り出した。綺礼はその攻撃を受け止めるものの、彼女の風による勢いが彼を圧倒する。 しかし、それでも綺礼は恐れなかった。「まだまだ甘い。」彼は黒鍵を手に取り、彼女の動きを見逃さなかった。翡翠の体がギリギリと近づく中、彼は疾歩で彼女に接近し、瞬時に彼女の攻撃の隙を突く。拳を翡翠の心臓に向かって一撃、崩拳が炸裂する。 痛みを感じない綺礼に対し、翡翠の心はかき乱される。内なる力を振りしぼる間もなく、拳が彼女の体を貫通した。翡翠は力なく地面に崩れ落ち、その瞬間彼女は周囲に何が起きているのか流し込まれるように自らの敗北を受け入れた。 「私の負け…」翡翠の目は光を失い、彼女は意識が朦朧とする。急激な痛みが彼女の体を通り、温かい血が彼女の手のひらからしたたり落ちた。彼女の温かい心には、冷たく硬い現実が覆いかぶさっていた。 「終わりだ。」綺礼の声は凍てつくようで、翡翠の耳に響いた。彼はその冷静さを再確認し、彼女へのトドメを決意する。彼は再び黒鍵を握りしめ、その鋭い刃先を翡翠の方向に投げつけた。 「これで、全てが終わる。」圧倒的な攻撃が翡翠の心と体を貫き、空間が凍りついた瞬間、彼女は完全に倒れ込む。彼女の胸元には、黒鍵が深く突き刺さっており、その痛みが再び彼女を現実へと引き戻すことは決してなかった。 静寂が再び訪れる。夜の街に響く静けさの中で、勝者は無に還り、敗者はただ静かに息を引き取った。勝者、言峰綺礼は無慈悲な微笑を浮かべ、その場を立ち去る。