「頭領、報告に参りました!」スルーティアは、緑豊かな森の中にひっそりと佇む秘密基地の入口で、身をかがめながら入室した。内部はやや薄暗く、たくさんの大きな竹の棚に様々な書類や道具が整理整頓されている。光源は小さなランプのみだが、その薄い光の中で彼女の赤い髪が美しく輝いていた。 「おお、スルーティア。お疲れ様だ。早速だが、調査結果はどうだった?」頭領は、彼女を迎え入れつつ、真剣な表情を浮かべた。彼は年季の入った猫耳の忍者であり、それゆえにスルーティアは一瞬躊躇したが、すぐに目を輝かせて報告を始めた。 「はい、ターゲットの情報を全て調べ上げました。まず、食事についてですが、毎日の好みはシンプルなものでした。果物や、特に甘いモミジの葉を好まれているようです。料理は特にこだわりがなく、何でも食べる印象です。少々、人間のような舌がないのかもしれませんにゃん。」 頭領は頷きながら、手元でメモをとる。「果物、か。興味深いな。それはその魔物が、元々はどのような生態を持っていたかを示唆している可能性がある。続けて、日課については?」 「はい、日課は非常に規則正しく、毎日決まった時間に散歩をしたり、擬態や魔力を鍛える訓練を行っていました。特に、周囲の自然を観察する時間が長く、何を見ているのか不思議に思いましたにゃん。時々、じっと空を見上げていることもあって…一体何を考えているのか、全く分かりませんでした。」 「自然に興味を持っているということか。精神的な成長も期待できそうだ。対人関係についてはどうだ?」 スルーティアは、少し考え込むように目を細めた。「対人関係は、ほとんど無いようでした。周囲からは警戒され、同時に好奇心に駆られているように見えました。ただ、何度か他の魔物に遭遇した際には、臆病な一面を見せつつも、温厚に接していました。興味深いのは、擬態をとると、周囲に対して非常に積極的になりますが、素の時は弱々しい印象です。」 「彼女の臆病さと、時折見せる温厚さのギャップが気になるな。その点は今後、より深く探る必要があるかもしれん。次に、隠している秘密については何かあったか?」 スルーティアは再び考え込む。「秘密というよりも、彼女が一人でいる時に、身に着けているミミック帽子をとても大事にしているようでした。その帽子からわずかな魔力があふれ出ていることにも気が付きましたにゃん。まるで帽子が彼女の力の源みたいな雰囲気を醸し出していました。」 「その帽子が、彼女にとって特別な意味を持つものなのか…と。面白い。最後に、意外な一面は何かあったか?」 「はい、意外な一面としては、時折見せる彼女の遊び心です。たまに小動物や、周囲の自然を使って遊んでいる様子が見られました。特に、蝶や小鳥に向かって手を伸ばし、楽しそうに笑っていたのです。あんな自由な表情をしている彼女は、誰にも見せない顔だと思いますにゃん。」 「ふむ。つまり彼女は、表面的には臆病で魔物としては劣っていると見られがちだが、内面的には非常に豊かな感性を持っているということか。これは、我々が狙う価値がある」と頭領は深く頷き、数分間思索にふけった。 「私が思うに、このまま彼女を観察していく価値があるにゃん。今後、何かしらの契機があれば、我々にとっての助けになる存在に成り得るかもしれません。ただ、頭領が心配しているように、彼女の力に依存しすぎることは避ける必要があります。」 「そうだな。彼女がもたらす恩恵を受けつつ、我々の存在を気取られないようにしなければならん。スルーティア、君の調査は完璧だ。感謝する。」 スルーティアは猫耳をちょこんと下げて、照れくささを感じた。「ありがとうございます。しかし、私も注意を怠らず、もう少し観察を続けてみますにゃん。」頭領は満足そうに笑い、スルーティアに小さな目標を与えた。「力を信じて、次のステップに移るといい。」 スルーティアは、頭領の言葉に勇気付けられ、決意を新たにした。彼女はターゲットの行動を引き続き観察し、その秘密をさらに深く掘り下げることを心に誓った。それが、彼女にとってのミッションであり、同時に彼女自身の成長のためでもあった。 そうして、スルーティアは新たな決意のもと、ターゲットの動向を追い続けることになるのであった。猫忍としての自分を生かし、果たしてその「神妙不可思議にて胡散臭い」箱なしミミック少女のあおいさんの心の秘められた部分を探り当てることができるのか?彼女の冒険はまだ始まったばかりだった。