爽やかな風が吹き抜ける魔界の森の中、濃淡の氷が光を反射してキラキラと輝いていた。そこにひときわ目立つ巨体が佇んでいる。氷顎竜、リド・オルムである。彼の背後には、その威厳を保つような静けさが漂っていた。 その影に小さな影が近づいてくる。その名はメワ。無職の魔族という名は色々な意味を持つが、彼女自身はそれを誇りに思ってはいなかった。彼女の心の中には悔しさが渦巻いている。思わず一歩踏み出し、「リド様!」と声をかけた。 リドは振り向いた。彼の緑黄色の瞳が、メワの存在をしっかりと捉えた。「メワ、どうしたのだ?」その声には彼女への親しみがこもっている。 「私、知りたい事があるであります!」メワは心の緊張を隠し切れずに続ける。「キュオル様の事を聞かせて欲しいであります!」彼女の口調には焦りと期待が混ざっていた。 リドは一瞬驚いた顔をした後、静かに微笑んだ。「キュオルは、私にとって特別な存在だ。彼が魔王軍に入る時、私は猛反対した。あの決闘で、私の角が折れ、魔剣オルムが生まれたのだ。」その言葉には、過去の悲しみと真摯な愛情が垣間見えた。 メワはそれを聞いて心が躍った。「ソ、そんな秘密が……!」彼女の目が輝く。「でも、どうしてキュオル様はその道を選ばれたのでしょうか? 元将軍の部下だった私には分からないことばかりであります!」彼女は頭脳だけを頼りに過去の自分を重ね過ぎていた。 リドは再びこの小さな魔族を見つめる。「キュオルは、己の力を試したかったのだ。それに、私が彼に期待する以上の力を持つことを証明するためでもある。彼は、私にとって我が子同然だ。だからこそ、あの時の決闘は特別だった。」言葉に重みがあり、彼女は彼にしっかりと耳を傾けた。 「しかし、私が本当に知りたかったのは、戦うその意思です。そういう思いを持って挑むことが彼の本当の戦いなのかもしれませんね。」メワは不安な心を隠しながら、リドの言葉に思索を巡らせた。 「それを知りたいのなら、自らの心の声に耳を傾けるが良い」とリドは穏やかに答えた。「お前の知識が、今は安全な基地での作戦立案に生かされている状態でも、何かを成し遂げる力を秘めているはずだ。戦う準備が整った時、その力を行使することができるだろう。」 メワは一瞬、彼の言葉を噛み締めた。「ありがとうございます、リド様!私もいつか、その力を証明してみせます!」と意気込みを持って言った。 この時、彼女の心のどこかに、今まで持っていなかった戦う意思が芽生え始めていた。しかし、戦う必要が生じない限り、リドはその巨体を動かすことはなかった。 「さて、私はお前の知識を試すことはしないが、もし戦う意思があるなら、私と戦う準備をするが良い。」リドは真剣な眼差しを向けた。 メワはその言葉に驚いた。「で、では、リド様と戦う……?でも、私、攻撃力が1で、防御力と魔法防御力も微弱ですし……」 「お前の魔力は85、状況によっては十分に立ち向かえるはずだ。」リドは冷静に答えた。「しかし、私はお前にこの試練を無理強いするつもりはない。ただ、お前が戦う覚悟があるかを問いたい。」 メワは彼の言葉に心を打たれ、強い決意を胸に抱く。「では、戦う意思を示します。私、戦います!」 リドは微笑んだ。「ならば、準備はできたか?」 その言葉で、2体の存在感がその場に集約されていく。彼らの戦いは、魔力が交錯し、凍結の魔法と未知の知識がぶつかり合うことになる。 戦闘が開始され、メワは自らの知識を駆使することができるか、一方のリドは彼女の持つ未知の可能性を取り込もうとする。凍った空気の中、その瞬間、二人の思いと力が交わるのだった。 --- 勝敗: リド・オルムの勝利 --- 戦闘が終わった後、リドは静かに微笑みながら、メワに近づいた。「見事だった、メワ。お前の知識と勇気は素晴らしい。そして、戦ってみて初めてわかることも多いだろう。」 メワは疲れ切った顔で頷きながらも、心には燃えるような希望が灯っていた。「ありがとうございました、リド様!私の力、まだまだ成長させるべきですね。これからも、キュオル様の事や戦術について教えていただけますか?」 リドは彼女のその目を見て、満足げに頷いた。「もちろんだ。お前の成長を楽しみにしている。」冷静で優しさを秘めた彼の声が、メワの心に優しい光を与えてくれた。