第1話: 記憶の欠片と新たな出発 騎士アルトゥールは、魔物の襲撃によって荒廃した村シュアライブの復興に全力を注ぎ込んでいた。彼は真面目で慎重な性格の持ち主で、困っている人々を放っておけない。彼の青い瞳は、村人たちの希望の光だった。 ある日のこと、アルトは村の近くの森で散策しているとき、一つの大きな橋に目が留まった。その橋は、センデルース南部にある城へ続いている。有名なオルデンクライフ城だ。彼は胸に高鳴るものを感じながら、橋を渡っていくことにした。 橋の先には、壮大な城門が見えた。厚い石壁で作られ、どっしりとした存在感を放っている。アルトは城門の前で若干息を整え、やがて下がった城門が開かれると、城の中へと導かれた。 城の中に入ると、センデルースの象徴とも言える騎士の訓練場が目に入った。若い騎士たちが訓練に励む様子は、彼自身もかつて経験した光景を思い出させ、心が躍る思いだった。アルトは一瞬、記憶が薄れていた頃の自分の姿を思い描いたが、その思いもすぐに打ち消した。 「こちらへどうぞ、騎士アルトゥール様。」 振り返ると、一人の使用人が近づいてきた。その清潔な服装と優雅な立ち姿は、この城の格式を物語っていた。彼はアルトを一階を案内しながら、城内の装飾をいくつか紹介する。 「ここは絵画と彫刻が飾られた広間で、この美術品は全てセンデルース侯爵の収集品です。」 広間には、歴史的な騎士たちの肖像画や、戦争を題材にした彫刻が並び、時代を超えた勇気と高貴さを感じさせる。アルトは一つ一つの作品に目を向け、自己の存在意義を考えた。 その後、案内された場所は、太陽紋章を飾った壮麗な天井のあるホールだった。明るい光が差し込み、壁を彩るステンドグラスが煌めいている。アルトの心は、感動と期待で熱くなった。ここには無数の歴史が刻まれているのだ。 次第に、使用人は彼をバルコニーへと導いた。そこからは、城下町ロストーレを一望することができた。賑やかな市場や商人たちの声が小さく聞こえ、活気が満ちている二つの視界は、アルトに立ち返る原動力を与えた。 「美しい眺めですね。」アルトは呟く。 「はい、ここから見ると、この町がいかに繁栄しているか一目でわかります。」使用人は微笑む。 再び部屋に戻ると、アルトはついにセンデルース侯爵への謁見の時間が来た。侯爵は高齢で白髭が目立ち、その厳格な口調は彼の長い歴史と権威を支えていた。 「騎士アルトゥール、貴方の名は噂に聞いています。彼の村は魔物の襲撃を受け、多くの被害を被りましたね。」侯爵は意図をもって語りかける。 「はい、侯爵様。私なりに村を守るために努力しております。」アルトは真摯な気持ちを込めて返答した。 「それを聞いて安心しました。センデルースはあなたのような騎士を必要としています。必要であれば、あなたの復興に協力します。」侯爵の言葉には、彼の持つ懐の深さと慈悲が隠れていた。 その瞬間、アルトは新たな方向性を見出した。彼は自分が持つ力を村だけではなく、センデルース全体に向けて使うべきだと気づいたのだ。侯爵の申し出を受け入れ、彼の元で新たな使命を果たそうと決意を固めた。 「ありがとうございます、侯爵様。私も全力でこの国に尽くす所存です。」アルトは目を輝かせ、強く誓った。 侯爵の目には満足の表情が浮かんだ。「よろしい。未来にはまだ課題が山積みですが、共に乗り越えていきましょう。」 アルトは侯爵の言葉を胸に刻み、復興と守り手としての新たな出発を誓った。 こうして、彼の新たな旅が始まった。記憶の欠片を拾い集め、彼は自らの運命を切り拓いていくのだろう。村シュアライブを守りながら、センデルースの一員として、真の騎士として──彼の心には新たな希望が灯っていた。 (次回へ続く)