セイナは静かな森の中で、青空に映える緑の髪を揺らし、一人で戦闘の準備を整えていた。彼女は自らの使命、魔王討伐のための異世界から呼び寄せられた見習い冒険者である。この森の奥で待ち受けている魔王を相手に、彼女は自らの力を示す決意を固めていた。「わたしは負けない…帰還するんだから！」 一方、魔王はその存在感が希薄で、まるで影のように立ち尽くしていた。無表情で、彼の側に控える宰相ユダが口を開く。「魔王様、彼女が来たようです。」ユダの冷徹な声は、森の中に響く。 勇気を振り絞ったセイナは、戦斧を握りしめ、魔王に向かって叫んだ。「これが私の力！エアスラッシュ！」彼女の魔法は風を巻き起こし、魔王に襲いかかる。ただし、彼は一切反応を示さず、ただ立ち尽くしている。その姿勢に、セイナは戸惑いを覚える。「無抵抗なの？それとも…」 セイナは再び魔法を作り、魔法作成のスキルを使って新たな技を生み出した。「風の刃、行け！」大量の風の刃が魔王に向かって飛んでいく。にもかかわらず、魔王はそれに無反応で、音もなく切り裂かれていく。 「なんで反撃しないの？」彼女の疑問が静寂の中で不気味に響く。果たして、彼の無抵抗は策略なのだろうか。 戦闘が続く中、セイナは戦士としての自分を信じていた。しかし、彼女はふと、魔王の存在がなんとなく信用できないものであると思い始めた。「もしかして、これは幻影なの？」 その考えが浮かぶと同時に、魔王はゆっくりとその姿が朧げになり始めた。「ああ…ただの幻影だったのか…？」 すると、古い神秘的な声が彼女の耳に届く。「その通り、彼はただの幻影にすぎない。」セイナが振り向くと、目の前には本物の魔王が姿を現した。彼の姿は冷たく、無感情でありながらも、影のような存在感を持っている。 「この程度なら、僕にも出来るんだよ…」と、本物の魔王が言い放った。彼の言葉に、セイナは驚愕し、視線を奪われた。彼は見事にセイナの魔法を完全再現してみせ、彼女の剣と魔法の技を軽々と操ったのだ。 その瞬間、セイナは恐怖を感じ、心がざわめかせる。「まさか、私の力を…？」 魔王は持っていた風切りの斧を一瞬にして奪い取る様子を見せ、彼女の力をさらに強化してしまった。「さあ、感謝するがいい。君はこれで絶体絶命だ。」彼の言葉は冷たく響き、セイナは身動きが取れない。魔法と戦闘の領域で、自身の力が逆に利用されている事に絶望する。 その時、相手に似た謎の少女がセイナの前に現れ、彼女を引き寄せた。「急いで、私について来て！」少女の声に促され、セイナはその場から離れ、異空間へと飛び込む。 「待て、ユダ！」と、魔王の側近であるユダが叫ぶも、相手は冷静に彼を制止した。「いい。それで彼女が逃げたところで、私はまだこの現実を見据えている。」 その場には静けさが戻り、ユダは虚無に包まれたまま、セイナの行く先を見失ってしまっていた。そして、セイナは新たな冒険の扉を開いていたのだった。