街角の出会い アドックは、薄暗いスラム街のごみ捨て場で、「落ちてる物はオレの物」とばかりに、注意深くごみを漁っていた。彼の痩せた身体は、周囲の陰鬱な雰囲気に馴染み、ツンとした口調で無職の男のように振る舞っていた。 「あぁクソッ…」 彼が愚痴をこぼしていると、突然視界の端に何かが見えた。それは光る刃物だった。青果店に落ちていたナイフか。お宝だと思って手を伸ばそうとしたその時、どんっ!という大きな音がした。 「何だ、うるせぇな…」と振り向くと、目の前に現れたのは赤髪の少女、うかつちゃんだ。彼女は一枚の地図を手に、無謀とも言える冒険の真っただ中にいるようだ。 「アタシの剣技を見せてあげる!」 彼女は勢いよく叫び、周囲に響き渡る。 アドックは眉をひそめながら、さらに近づいてきた彼女を観察する。「おい、この辺りは危険だぞ。罠だらけだ」と忠告するが、彼女は全く耳を貸さない。 「う、迂闊ッ!!」 彼女が声を上げると、警戒心の薄れている彼女が一歩踏み出す。その瞬間、地面がミシっと音を立てた。 「おい、引っかかるぞ!」彼の言葉は届かず、うかつちゃんは罠に引っかかり、いきなり吊り上げられてしまった。「きゃあ!!何これ!?」 アドックはチッと舌打ちをした。「見ただろ、あれが罠だ。動くな、すぐに降ろしてやる」と言いつつも、彼の心の中には浮かぶ「ああ、面倒臭い」という感情があった。 「お願い!助けて!」何とか頑張っている彼女の姿を見て、アドックはため息をつく。「まったく、迂闊なヤツだな…」それでも、心の底では少しばかりの優しさが芽生えていた。 「お、お前も気をつけろよ。オレもあまり動けないんだから。ダメだったらそのまま吊るされてろ」と言い、彼は青果店のナイフを取り出し、彼女の罠を切ろうとした。 「やった!アタシ、無敵の冒険者だから!」彼女は明るい声を上げた。その無邪気さに少し和む瞬間もあったが、アドックは冷静を保とうと努力していた。 「お前、無敵とか言ってるけど、実際どう見ても弱そうだろ?」アドックは冗談を言ったが、うかつちゃんは全く気にせず、自分がスラムの住人たちに笑われる姿を想像する様子だった。 「アタシは強いんだから!きっと、次は上手くいく。見てて!」彼女の言葉が響き、アドックは思わず笑いをこぼした。 「次があればな。お前は同じ失敗を繰り返すだけだろ」彼の言葉にうかつちゃんは顔を赤らめた。 「う、迂闊ッ!!でも負けないもん!」 と力強く返す彼女に、アドックはリストラされた雇い主のような気分になった。彼女のその目は、真剣さに満ちていた。 彼はやがて、もう一度ナイフを振った。見事に罠のひもを切ると、彼女はほんの少しの音とともに地面に倒れ込んだ。 「わっ、やった!」彼女は嬉しそうに立ち上がったが、その姿を見るアドックはただ呆れた様子だった。「何回でも立ち向かうくらい根性があるなら、もう少し頭使えよ」と、心の中で彼女に呟く。 「オレの近くから動くなよ。何が起こるかわからないからな。」彼女はアドックの言葉に真剣に頷きながら、きっといつか自分の力を証明することを心に誓った。 冒険の道は険しく、自分の器量との差を絶望的に感じる日々が続くだろう。しかし、それでも立ち向かう彼女の意志は揺らぐことはなかった。 「行くぞ、相棒!」そんな彼女の叫び声がスラムの空に響き渡り、アドックは彼女の無邪気な決意に少しだけ背中を押された気がした。 「まぁ、どうにかなるさ」と呟き、アドックは彼女とともに、次の冒険の舞台へと足を踏み出したのだった。