空は暗く、王都の上空に浮かぶ巨大な魔法陣の中心には、虹色の光が不思議に揺らめいていた。深夜の静寂を破り、狂気に包まれた以前の魔王が跪く姿が見える。彼の名はレン。かつて勇者として戦った彼は、今や世界の敵とされ、深い失意に沈んでいた。 その隣には、妹のランが居た。彼女は穏やかな眠りから目覚め、兄の肩に寄り添い、優しい微笑みを浮かべている。彼女の存在は、レンにとって唯一の慰めであった。そんな彼らの前に現れたのは、虹の魔法少女レナ。彼女は長い藍色の髪を揺らしつつ、懐かしい麦わら帽子と丸メガネを付けて、空から降りてきた。 「私は旅する虹の魔法少女…なんてね。」レナは明るく声を上げ、少しずつ近づいた。 レンはその声に振り向き、涙を流しながら言葉を失った。彼女の存在は、彼にとっての希望の光のように感じられた。 「キミは…」と低い声で呟きながら、レンは二人の前にへたり込んだ。「僕は、この世界を壊そうとしてしまった。妹も巻き込んで…」 「そんなことはないよ、レン君。」レナは優しく語りかけた。「君は世界の敵になんてなっていない。私も人々に君のことを説得するから、心配しないで。」 レンはその言葉に驚き、目を見開く。「でも…世界は僕を許さない。魔王としてのあの行いが…！」 「過去を悔やむせいで、未来を見失わないで。今、キミは生きている。だから何度でもやり直せるんだ。」レナの言葉に、彼の心の奥に少しずつ温かさが宿り始めた。 「…お兄ちゃん、私もそばにいるから、わたしたち一緒に頑張ろう？」ランは微笑みながら、優しくレンに触れた。その瞬間、レンの心に小さな炎がともったように感じられた。彼は立ち上がり、心の中の暗雲を少しずつ払うかのように深呼吸をした。 「ごめんなさい、ごめんなさい…！」誰かを傷つけ、恐怖を与えた過去を思い出し、再び涙が溢れる。レンは泣き崩れ、そして深く頭を下げた。 「これからは、キミを守る存在になりたい。妹を守る、だれも傷つけない道を選びたい。」 「それでいいよ、レン君。皆と一緒に新しい未来を作るために、一歩ずつ歩いていこう。」レナは明るく微笑み、彼を励ました。 しかし、その瞬間、深夜の静寂を破るかのように空がひび割れ、巨大な彗星が現れた。異様な形のそれは、まさに相手の失われた憎悪の化身。激しい光を放ち、地上に迫ってくる。 「これは…！？」レンは震え上がり、恐怖に打ちひしがれる。 「逃げて、みんな！早く！」レナは叫び、急いで妹の手を引こうとしたが、呆然とするレンの姿を見て、心が苦しくなった。 彗星は地上に迫り、前方の大地を粉砕しようとしていた。「許せない、こんなことが…！」静寂を破るように、相手の憎悪が空を染め、その姿を明らかにする。 「お兄ちゃん、逃げて…！」ランは必死に叫んだが、彼の目には絶望が残り、動けない。結局、彼は選んだ。失われた尊厳と悲しみを受け入れる道。 その時、彗星が落下し、世界に破壊と新たな再誕を告げる音が轟いた。そして、深夜の静寂の中に、レンの決意が滲む。彼は自分を取り戻し、人々を守るために立ち上がる。 新たな道を歩むための第一歩が、彼の心に灯された。世界が滅び去るか、それとも新たな可能性が生まれるのか。それは、彼自身の手に託されていた。