砂漠の町の空は、薄い雲に覆われ、じりじりとした日差しが照りつけている。その広大な砂地の中に、ひときわ目を引く黒い衣装を着た少女がいた。彼女の名は、ストルネール・シーヴ。周囲の視線を集める彼女が、まるで舞うように移動している。 「貴方のスキル、盗んじゃった…♪」彼女は口元に笑みを浮かべ、機敏な動きで相手の隙を伺う。彼女の意中の相手、ドギーは、巨大な体躯で、剣を持った姿勢で立ちはだかっていた。 「そんなに調子に乗って、俺を侮ってんのか、小娘！」ドギーはかぶりを振り、笑い飛ばした。その声には、余裕と毒が混在していた。彼は持っている黒霊剣アグニ＝エスカを緩やかに揺らし、その刀身に宿る死の概念を誇示する。 「楽しいバトルができそうね、いい響きだわ！」ストルネールは楽しげに応答し、周囲に潜む砂埃を軽やかに舞って見せる。彼女の敏捷さはまさに怪盗の名にふさわしい。しかし、ドギーは神剣を持つ強敵。そんな彼に挑むのは危険が伴うことも理解していた。 その瞬間、ドギーはスキル「無刀狩り」を放った。ストルネールの動きが一瞬止まる。彼女の体に流れる恐怖は、まさに「奪う」というスキルを持つ自分の技能が通じないことを意味している。「ああ…、これは、まずいわね。」ストルネールは心の中で反省した。 次の瞬間、ドギーの黒霊剣が振り下ろされる。ストルネールは咄嗟に「夜空を舞う大怪盗」を発動させ、なんとか華麗にその攻撃をかわす。しかし、ドギーの次の一撃はiv無情にも突き刺さる。 「デミ・フラガラッハ！」灼熱の光がストルネールを包み込み、彼女は背後に吹き飛ばされた。その衝撃に、彼女は尻餅をつき地面に倒れる。 「もっと強気だっただろ！」ドギーは冷たい笑みを浮かべ、ストルネールに近づく。「お前みたいな小娘、俺に勝てると思ってたのか？」 ストルネールは立ち上がろうとするも、その身体は辛うじて動く程度。ドギーの迫力に気押され、心はざわめく。「私の怪盗の神手が…充分に……」 だが、ここであきらめるつもりはなく、再び立ち上がろうとする。そんな彼女の心中を見透かしたように、ドギーは高らかに笑った。「このまま終わらせるぞ、貴様の挑戦は俺にとって無価値だった！」 ドギーが刀を彼女に向け、ストルネールの心臓を貫く直前、何かが変わった。彼の身体が一瞬痙攣し、神剣が持つ力に蝕まれるように苦悶する。ストルネールも思わずその光景に目を見張った。 「何が起こったの…！？」 ドギーは自らの剣に支配され、ついにストルネールに一瞬の隙を与える。彼女はその勇気を振り絞り、体勢を立て直す瞬間、頭に閃いた何かを感じ取る。 （この瞬間、必ずや私も立ち向かうチャンスがあるわ！） この小さな転機は、戦いの流れを変えるかもしれない。痛みに苛まれたドギーの顔には弱点が見え隠れしていた。 ストルネールの心に希望が灯る。彼女はまだ戦えた。魔王軍から奪還するために。彼女の意地、そして怪盗としての誇りが彼女を押し上げる。 その後、彼女の運命がどのように転がるのかは、まだ誰にも分からなかった。だが、一つは確かだった。誰もが恐れる相手、ドギーの意思が弱まった瞬間、彼女は新たな戦いへの扉を開けたのだ。