深夜の王都上空、巨大な魔法陣が静かに輝いている。その中心には、魔王レンこと相手が立っていた。彼の隣には、優しく微笑む妹のランが寄り添っていた。彼女は、穏やかな表情のままで眠りについている。 「お兄ちゃん、頑張って…。」と彼女の小さな声が聞こえてきた。相手はその言葉に胸を締め付けられた。彼がどれほどの絶望の中にいたとしても、妹の存在だけは彼を支えている。 しかし、目の前には旅人あなたが立ちはだかっていた。漆黒の軍服をまとい、無数の仮面を持つその者は、相手が立ち向かってきた最初の希望であり、最後の敵でもあった。 「僕は、世界の敵なんだ…。」相手は呟く。心の中に渦巻く憎悪は、彼を再び魔王へと引き戻そうとしている。 あなたは相手の目を見つめて、静かに言った。「それは違う。キミは、この世界の敵ではない。」 相手はその言葉に驚いた。英雄の名を持つあなたが、自分をかばうように語りかけてくる。彼は、あなたが自分の心を見透かすかのような視線で見つめ返してくるのを感じた。 「キミは多くの人々を守るために戦った。今は傷ついているかもしれないが、まだやり直す機会が残っているんだ。」あなたの声には力強さがあった。彼はかつての自分のように勇気を振り絞ってほしいと願った。 「やり直す…？」相手は心に一瞬の迷いが生まれた。彼はこれ以上の痛みを世界に与えるのか、それとも自分の運命に逆らうのか。彼の目には涙が浮かんでいた。「でも、僕は世界に…」 あなたは、深く息を吸い込む。彼自身も多くの戦いを経てきた。故に、体験した苦しみはよく理解できた。「世界中の人々は、キミが本当に悪だとは思っていない。僕が説得する。絶対に聞いてくれる。」 その言葉は、相手の心を少しずつ解きほぐす。彼は妹の顔を見つめ、再び彼女に微笑んで欲しかった。ランが目を覚まし、相手に向かって言った。「お兄ちゃん、私が信じてるから…。」 相手はついに崩れ落ち、号泣しながら声を震わせる。「ごめん…ラン、ごめん、僕が…、全てを台無しにしてしまった。」 あなたはその様子を見ながら、小さく頷く。「過去は変えられないけれど、今から未来を築くことはできる。」 その言葉に勇気づけられた相手は覇気を取り戻し、同時に彼の内心に潜んでいた憎悪が霧散していくのを感じた。しかし、その霧の向こうには闇が広がっていた。何か大きな力が、再び彼の体に宿ろうとしている。 「何か、感じる…。」相手が呟くと、あなたは空を見上げた。彼らの上空、夜の空に一つの大きな光が現れ、徐々に形を持ち始める。まるで意志を持ったかのように、それは近づいてくる。 「大彗星…？」あなたが驚く。空を覆うような大きさで、恐ろしい影が迫ってきた。それは相手の霧散した憎悪の象徴であり、再び世界に破滅をもたらす使者だった。 「みんな、逃げて！」あなたは叫ぶも、時すでに遅し。大彗星が煌めきながら地に降り注ぐ瞬間、相手は自らの運命を改めてかみしめた。その瞬間、破滅が彼らの目の前に立ちはだかる。 「お兄ちゃん、私たち…。」ランの声が響くも、彼の未来は影に飲み込まれようとしていた。 最後の希望は砕け、王都が炎に包まれる。世界が終焉を迎えようとしていた。